生前贈与・死因贈与など贈与関連用語

財産を相続ではなく、生きているうちに子や孫へ渡したり、死後に特定の人へ贈る意思を示したりする行為は、法律上「贈与」という形で整理されています。
代表的なものが「生前贈与」や「死因贈与」といった用語ですが、これらは具体的にどんな仕組みを指し、相続との違いは何なのでしょうか。
本記事では、贈与にまつわる用語を中心に、「生前贈与」「死因贈与」などの仕組みをわかりやすく解説し、浄土真宗の視点を踏まえた考え方にも触れます。

目次

1. 贈与(ぞうよ)とは?

まず、「贈与」とは、自分の財産無償で相手に与えることを指します。法律上、「当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与えることを約し、受贈者がこれを受諾することによって効力を生ずる」行為と定義されます。
主な形式としては以下があります:

  • 生前贈与: 生きている間に、子や孫、第三者へ財産を贈与する
  • 死因贈与: 「自分が死んだときに贈与が効力を発生する」契約

相続と異なり、「自発的に生前に贈る」点が大きな違いです(死因贈与はやや特殊な形です)。

2. 生前贈与(せいぜんぞうよ)とは?

「生前贈与」は、自身が存命中に、特定の相手(子、孫、親族など)へ財産を譲る行為を指します。
目的としては、

  • 相続税対策: 毎年110万円までの贈与なら贈与税が非課税となる(暦年贈与)
  • 家族の生活支援: 生前に財産を分けてあげることで、教育資金や住宅資金をサポート
  • 将来の相続争いを防ぐ: あらかじめ分与しておけば、死後の財産分割がスムーズ

生前贈与には、次のような制度もあります:

  • 暦年贈与: 毎年110万円まで非課税で贈与できる
  • 相続時精算課税制度: 最大2,500万円まで贈与税がかからず、相続時に精算する仕組み

こうした制度を活用しつつ、贈与契約税務手続きを適正に行う必要があります。

3. 死因贈与(しいんぞうよ)とは?

「死因贈与」は、贈与者が死亡することを“条件”として成立する贈与のことです。
たとえば「私が死んだら、この土地をあなたに贈与する」といった約束を受贈者が承諾している場合、贈与者が死亡した瞬間に贈与が効力を発生します。

  • 法的性質: 遺贈(遺言による財産譲渡)に似ているが、契約行為である点が異なる
  • メリット: 遺言書を作成せずに財産を渡せるが、双方の合意が生前に必要
  • 注意点: 受贈者は、贈与者の死亡後に贈与税ではなく、相続税の対象となる場合がある

一般的には、遺言書を作成するほうが法的に明確であり、死因贈与契約はあまり主流ではありませんが、状況によっては活用されるケースもあります。

4. 浄土真宗の視点:財産は成仏を左右しない

浄土真宗の「他力本願」では、故人の往生や成仏は阿弥陀如来の本願によって定まるため、「どのように財産を分けるか」が成仏を左右するわけではありません。
しかし、生前贈与や死因贈与を家族が知らないまま進めたり、不明瞭な手続きで財産が移動したりすると、家族間のトラブルを引き起こす可能性があります。
“財産への執着を減らす”という浄土真宗の教えを踏まえつつも、実務的な整理家族との話し合いはしっかり行うことが大切と言えるでしょう。

5. 贈与関連の注意点

生前贈与や死因贈与を検討する際、以下の点を留意しておくとスムーズです:

  • 1. 税務面の確認
    – 贈与税や相続税の扱い、110万円の非課税枠や相続時精算課税など、税理士へ相談
  • 2. 書面化
    – 贈与契約は口頭でも成立するが、トラブル防止のため書面で契約書を作成
  • 3. 家族間の合意
    – 生前贈与の状況によっては、遺留分(相続時の取り分)に影響を与える場合も。
    家族同士で情報を共有し、納得した上で進める
  • 4. 公正証書遺言との比較
    – 大きな財産移動を想定するなら、公正証書遺言で明確に残す方法も検討

まとめ:財産移転をめぐる選択肢を理解し、家族を守る

  • 生前贈与: 生きている間に財産を渡す。
    贈与税の制度(暦年課税相続時精算課税)に注意。
  • 死因贈与: 自分の死が条件で贈与が成立する契約。
    遺言に近い性質を持つが、相続税の対象となる場合も。
  • 法定相続: 遺言がない場合、民法の規定で相続人や相続分が決まる。
    遺産分割協議で柔軟に決定できる。
  • 他力本願: 浄土真宗の発想では、財産の分け方が往生を左右しない。
    ただし家族の和を守るために、誠実な話し合いと整理が不可欠。

生前贈与」「死因贈与」などの贈与関連用語は、財産移転の仕組みを知る上で重要です。
どの選択肢を取るかによって税務や相続の扱いが変わり、家族の相続トラブルにも影響します。他力本願の考え方からすれば、財産への執着を緩めつつも、家族に混乱を残さないよう事前の話し合いと法律知識の習得が大切です。
税理士や行政書士、弁護士などの専門家にも相談しながら、家族を守るためのベストな方法を選んでみてください。

参考文献

  • 民法(相続・贈与に関する条文)
  • 『教行信証』 親鸞 聖人
  • 『歎異抄』 唯円
  • 相続・贈与に関する税理士・弁護士の実用書
  • 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式情報
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