本膳・精進落とし・精進揚げ:法要後の会食

法要や葬儀の後に行われる会食の場には、さまざまな名称や習慣が存在します。その中でも「本膳」「精進落とし」「精進揚げ」は法要後の食事を表す代表的な言葉ですが、具体的にどのような意味や由来があるのでしょうか。
本記事では、それぞれの言葉が示す内容や目的、そして浄土真宗の「他力本願」の視点から見る法要後の会食の考え方を解説します。

目次

1. 本膳(ほんぜん)とは?

「本膳」は、もともと正式な仏事の席で出される最初の膳を指し、法要などの儀式後に供される食事のことを指します。

  • 由来: 和食の伝統的な会席形式の中で、最初に出される膳が「本膳」と呼ばれていた
  • 内容: お吸い物やご飯、数品の副菜などを含むことが多い
  • 用途: 正式な仏事や儀式のあとに出される、厳粛な膳

今日では、本膳料理という形で、精進料理和食会席が用意されることもあり、法要後の食事を全体として「本膳」と呼ぶケースもあります。
「本膳」として出される料理は地域や家庭によって異なり、昔ながらの精進料理が出される場合と、現代風にアレンジされた和食が提供される場合もあります。

2. 精進落とし(しょうじんおとし)とは?

「精進落とし」は、葬儀や法要の精進料理(肉や魚を避けた料理)から開放され、通常の食事に戻ることを指す言葉です。特に葬儀のあと、遺族や親族が集まって会食を行う際に使われる言葉として広く知られています。

  • 本来の意味: 葬儀や法要中は肉や魚を断っていたが、儀式が終わり喪が解ける(忌明け)ことで再び通常の食事へ戻る
  • 現代的な用法: 葬儀当日や法要当日の会食を「精進落としの席」と呼ぶことが多い(肉や魚も含む料理が出される)
  • 意義: 遺族や親族が一息つく場として、故人を偲びながら会食する

浄土真宗では、肉や魚を断つこと自体成仏の要件ではなく、あくまで供養の習慣にとどまります。「精進落とし」の場は、家族が故人を語り合い、感謝の念を深める時間と捉えられるでしょう。

3. 精進揚げ(しょうじんあげ)とは?

「精進揚げ」という言葉も、地域や家庭によっては「精進落とし」とほぼ同義で使われることがあります。
ただし本来、「精進揚げ」とは

  • 精進料理の一種としての揚げ物(野菜や豆腐などを揚げた料理)を指す場合がある
  • 地域性: 一部の地域で、「精進落としの会食」のことを「精進揚げ」と呼ぶ

したがって、「精進落とし」「精進揚げ」が混在して使われるケースがあり、意味が重複することがあります。どちらも「法要後の会食」「儀式の後で普通の食事に戻る行為」を示す点では共通しています。

4. 浄土真宗の「他力本願」と会食の意義

浄土真宗においては、故人がどのような食事を提供されるか精進料理が厳格に保たれるか往生を左右しないと考えられています。阿弥陀如来の力(他力本願)により、亡くなった瞬間に往生が定まるためです。
しかし、会食の場が全く無意味かというとそうではなく、

  • 遺族や親族が集まり故人を偲ぶ
  • 思い出を語り合いながら、仏法に触れる機会
  • 今後の家族の結束を確認し合う場

としても意味深い時間となります。「精進落とし」や「本膳」を整えるのは、儀礼的な意味だけでなく、故人への敬意と残された人々の心の切り替えを助ける効果があると捉えられるでしょう。

5. 会食を行う際のポイント

法要後の会食を行う上で、次のようなポイントを押さえておくとスムーズです。

  • 家族で相談: 本膳や精進落としを行うかどうか、どの程度の料理を用意するか、予算などを事前に話し合う
  • お寺や地域の慣習: 地域によっては精進料理を厳守する、肉魚を避けるなどの習慣が残る場合も。僧侶や地元の年長者に確認すると安心
  • 料理の手配: 葬儀社や仕出し業者、飲食店などと連携し、必要な人数や好みに合わせてメニューを決める
  • 当日の進行: 挨拶の順番や合掌など、簡単な式次第を決めておくと混乱を防げる

まとめ:法要後の会食は故人への敬意と家族の結束の場

  • 本膳: 正式な仏事の膳で、儀式後に供される厳粛な食事。
  • 精進落とし: 葬儀後や法要後に食事で精進を解く行為。
    普通の料理に戻る」意味を持つ。
  • 精進揚げ: 地域によっては精進落としと同義。
    本来は「野菜の揚げ物」など精進料理の一種を指す。
  • 浄土真宗の視点: 食事の形式が成仏を左右するわけではなく、故人を偲ぶための心家族の気持ちを大切にする。

本膳」「精進落とし」「精進揚げ」という言葉は、いずれも法要後や葬儀後の会食を示す表現です。
近代では儀式の簡略化が進み、必ずしも厳格な精進料理を続けるわけではなく、自由なスタイルで故人を偲ぶことも増えました。浄土真宗の「他力本願」の考え方では「故人の往生」は既に定まっており、会食はむしろ家族同士が支え合う場として重要。
ぜひ、家族の希望地域の習慣に合わせて、会食の形を選び、故人への敬意感謝の思いを深めてみてください。

参考資料

  • 『教行信証』 親鸞 聖人 著
  • 『歎異抄』 唯円 著
  • 法要・会食に関する実用書
  • 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式情報
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