葬儀や法要の際に、「中陰壇」や「後飾り」という言葉を耳にすることがあります。これらは、故人のための供養のための道具や、遺族が故人を偲びながら過ごすための場として用意されるものです。特に自宅で法要を行う場合、どのように飾りを整えるかは、葬儀の準備と同じく重要な作業です。
本記事では、中陰壇や後飾りの意味と、それをどのように自宅で準備すればよいのか、浄土真宗の視点を踏まえて解説します。
1. 中陰壇(ちゅういんだん)とは?
「中陰壇」は、故人が亡くなってから49日目(七七日、しちしちにち)までの期間中、故人の霊が次の生へと導かれると信じられている「中陰」の間に、仏前に供えるための祭壇です。
中陰壇には、故人の法名が書かれた位牌や、花や果物、お茶や水などが供えられ、遺族や親族が日々お参りします。
中陰壇は、法事を通じて故人を偲び、心を落ち着ける時間でもあります。
- 場所: 家の中心に近い場所、仏間やリビングなどに設置することが多い
- 飾り方: 供花やお香、お茶などを整えて、香炉や灯明を置く
- 役割: 故人が仏法の光に包まれることを祈り、遺族が感謝と共に参拝するための場所
浄土真宗では、故人が阿弥陀如来の光に包まれて往生したと考えるため、物に魂が宿るという捉え方は薄いものの、心を落ち着け、念仏を称えるための場として中陰壇は重要な役割を果たします。
2. 後飾り(あとかざり)とは?
「後飾り」は、故人の納棺後から四十九日までの間に、遺族が故人を偲ぶために行う装飾的な準備です。
中陰期間に入ると、故人が物理的にその世から去り、次の生に向かって進むと信じられています。そのため、家の中に仏壇や仏具を整えて、供養の気持ちを込めた飾りを整えることが大切です。
具体的には、お花や灯明を灯し、香炉や仏具を整えてお参りを行います。
- 場所: 仏壇や中陰壇周りに供物やお花を飾る
- 飾り方: お花を新しく交換したり、灯明や香炉を灯して供養する
- 供物: お茶やご飯、果物などを供える
浄土真宗では「すでに故人は仏の光に包まれている」と考えるため、過度に仏具に依存しないスタンスですが、故人を偲ぶ気持ちを家族がしっかりと持つことは大切にされています。
3. 浄土真宗の視点:物に魂は宿らない
浄土真宗では、物に魂が宿るという考え方を持たず、「すべては仏の光に包まれている」と考えます。
そのため、「供え物」や「飾り」が成仏を左右するわけではないとされていますが、故人を偲ぶ場としての意味は大きいとされています。
中陰や後飾りを整えること自体が、家族の気持ちを整理し、仏法に触れるための大切な時間となります。
- 物への執着: 物自体に過度な執着を持たず、念仏を称え、心を整えることが最も大切
- 供養の心: 故人への感謝を込めて、お花や灯明を供えることが重要
- 家族の絆: 中陰壇や後飾りを通じて、家族が共に故人を偲ぶことが意味を持つ
4. 自宅での飾り方のポイント
自宅で法要や供養を行う際、中陰壇や後飾りをどのように準備すればよいのか、以下のポイントを参考にしてください。
- 1. 場所の確保
– 中陰壇を置く場所として、家の中心に近い場所や仏間、リビングなどを選ぶ。
– 照明や掃除を行い、清潔で静かな空間を作りましょう。 - 2. 供花や供物の準備
– 生花や果物、お茶やご飯を用意し、灯明を灯して供える。
– 定期的に花を交換し、供物が新鮮であるように配慮します。 - 3. 供養の時間
– 毎日念仏を称え、家族で手を合わせる時間を作る。
– 故人の思い出を語り合うことも、心を落ち着ける良い方法です。 - 4. 住職や僧侶に相談
– 供養の方法や飾りについて不安があれば、住職や僧侶に相談して、自宅での供養が適切に行われるようにアドバイスを受けましょう。
5. まとめ:心を込めた供養を大切に
- 中陰壇: 故人を偲ぶための祭壇。
故人への感謝と仏法に触れる時間を作る。 - 後飾り: 供花や供物を通じて、家族が共に故人を偲び、心を整える。
- 浄土真宗: 「物に魂が宿るわけではない」としながらも、供養の心が重要。
- 他力本願: 供養の形式にこだわるのではなく、心を込めた手順を大切にする。
中陰壇や後飾りは、故人を偲び、家族が心を整えるための大切な時間です。浄土真宗の「他力本願」を考慮しながら、物に執着しないで、家族の心を大切にした供養を行いましょう。
また、他人の助けや地域の風習を尊重しつつ、家族や親族が協力して進めることで、より意味のある供養となります。
参考資料
- 『教行信証』 親鸞 聖人
- 『歎異抄』 唯円 著