葬儀や法要の場面で頻繁に登場する言葉として、「遺影」や「遺書」、「遺品」があります。
いずれも故人が残したものを表す言葉ですが、具体的にどのような意味を持ち、どのように扱えばよいのでしょうか。
本記事では、「遺影」・「遺書」・「遺品」の定義や特徴、浄土真宗の視点から見た考え方を解説します。
1. 遺影(いえい)とは?
「遺影」とは、故人の写真を指します。特に、葬儀や法要の場で飾られる写真を「遺影写真」と呼ぶことが多いです。
以下のポイントが挙げられます:
- 選び方: 故人が生前に気に入っていた写真を拡大・加工するケースが一般的
- 加工: 背景を切り抜いて白やグレーに変更し、枠やリボンを付けることが多い
- 葬儀終了後: 遺影は自宅の仏壇やお墓参りの際に飾り、故人の姿を偲ぶためのシンボルとなる
遺影の存在は、遺族が故人を想う上でとても大きな意味を持ちます。浄土真宗でも、「写真そのものに霊力が宿るわけではない」と考える一方、故人をしのぶ象徴として大切に扱われます。
2. 遺書(いしょ)とは?
「遺書」は、亡くなる前に自分の思いや考えを綴った書き残しを指します。
遺言書との大きな違いは、遺言書が法的効力を持つ書面であるのに対し、遺書は必ずしも法的効力がないという点です。
ただし、内容によっては
- 遺書の一部が遺言書としての要件を満たしている(例:自筆証書遺言として成立)
- 「誰々に何を譲りたい」という趣旨が書かれており、遺族が協議の参考にする
という場合もあります。
遺書は家族への想いや自分の人生観などが記されることが多く、法的にどうこうというより遺族が心情を知る手がかりとして大切にされるケースが多いです。
3. 遺品(いひん)とは?
「遺品」は、故人が生前使用していた物を総称した言葉です。服や家具、趣味の道具、写真、手紙など、多岐にわたるアイテムが含まれます。
遺品整理の際には、
- 思い出品(写真、手紙、趣味の道具)
- 実用品(衣服、家具、家電)
- 貴重品・相続品(通帳、印鑑、貴金属、骨董など)
…などに分類し、どれを残すか、どれを処分するかを家族が協力し合って決める必要があります。
浄土真宗では、物に魂が宿ると考えないため、過度に執着しないことを勧めつつも、故人を偲ぶ思い出としての遺品を大切にするバランスが重要とされます。
4. 浄土真宗の視点:物に宿らないが心は大切
浄土真宗の教え(他力本願)では、「人が亡くなった瞬間に阿弥陀如来の光に包まれ、往生が定まる」と考えます。
このため、遺影や遺書、遺品に霊力が宿るわけではなく、残された人が故人を偲ぶための象徴的な存在です。
下記のような姿勢が勧められます:
- 物への過度な執着を持たず、念仏を通じて故人を想う
- 遺影・遺書・遺品は、家族が故人を偲ぶ手がかりとして大切に扱う
- 不要となった遺品は「今までありがとう」と感謝を示しつつ整理
5. 遺影・遺書・遺品の整理におけるポイント
これらのものを整理・活用する際、下記のポイントを意識すると穏やかに進められます:
- 1. 遺影の作成と保管
– 葬儀用の遺影をきちんとデータ化し、バックアップしておく
– 仏壇近くに小サイズで飾る、デジタル写真立てを使うなど工夫 - 2. 遺書の取り扱い
– 法的に遺言として有効かどうか専門家に確認。
– 内容を無視しないよう、家族みんなで読んで故人の意向をくみ取る - 3. 遺品整理
– 思い出の品を選別し、不要なものは供養業者やリサイクルなどで処分
– 大きな家具や家電は業者に頼むなど、負担を一人で抱えない
まとめ:故人を偲ぶ手がかりとして大切に扱う
- 遺影: 葬儀や法要で飾られる写真。
故人を偲ぶ象徴として大切に保管。 - 遺書: 故人の想いや意向が書かれた手紙や書面。
必ずしも法的効力はないが、家族にとって重要なメッセージ。 - 遺品: 故人の使っていた物すべて。
思い出の品や貴重品を整理しつつ、不要なものは感謝を示して処分。 - 他力本願(浄土真宗): 物に霊力があるわけではない。
しかし、故人との絆を深める手がかりとして心に寄り添う。
「遺影」「遺書」「遺品」は、いずれも故人を思い出し、家族が心を整えるためのものです。
浄土真宗の考え方では、人の往生は阿弥陀如来の本願によってすでに定まるため、これらが直接成仏を左右するわけではありません。しかし、「物にはこだわらない」とはいえ、故人を偲ぶうえでの大切な宝として尊重し、家族が協力して整理・保管することが理想的です。
ぜひ、専門業者やお寺の僧侶に相談しつつ、家族の絆を深めながら、故人との思い出を大切に残していきましょう。
参考文献
- 『教行信証』 親鸞 聖人
- 『歎異抄』 唯円
- 遺品整理や遺書の取り扱いに関する実用書
- 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式情報