経済的に困窮している場合でも、生活保護を受けながら葬儀を行うことは可能です。
生活保護制度には、葬儀費用の一部を国が負担してくれる「葬祭扶助」という仕組みが存在します。
本記事では、生活保護と葬儀費用の関係を中心に、「扶助はどのように出るのか」「どんな手続きが必要か」などを解説し、浄土真宗の「他力本願」の観点から見た考え方にも触れていきます。
1. 生活保護における葬儀の位置づけ
生活保護とは、資産や収入が十分でない方に対し、国が最低限度の生活を保障する制度です。
生活保護には以下の8種類の扶助があり、そのうちの一つが「葬祭扶助」です。
- 生活扶助
- 教育扶助
- 住宅扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
つまり、受給者やその扶養義務者が亡くなった場合、必要最低限の葬儀を行えるように、葬祭費用の一部を支給する仕組みが整えられています。
2. 「葬祭扶助」とは?
「葬祭扶助」とは、生活保護受給者(または受給見込みの方)が亡くなった際に、その葬儀費用を公費で賄う制度です。
対象となる例としては、
- 本人が生活保護を受給していた
- 扶養義務者(子ども、親など)が生活保護受給中の場合など
主な支給内容は、火葬料、霊柩車代、棺、骨壺など、ごく簡素な葬儀(直葬に近い形)に必要な費用が中心です。
支給される金額
葬祭扶助の金額は、自治体によって定められており、地域差があります。
一般的には15万~20万円程度が上限とされ、詳しくは自治体の福祉事務所で確認する必要があります。
3. 申請の流れ
葬祭扶助を受ける場合、通常は下記のような手続きが必要です:
- 福祉事務所への相談
受給者(または遺族)が亡くなった際、事前に福祉事務所へ連絡し、「葬祭扶助を利用したい」と伝える。 - 見積書の提出
葬儀社に簡素な葬儀プランの見積書を作成してもらい、福祉事務所に提出。 - 審査
福祉事務所が見積内容を確認し、支給額を決定。 - 葬儀の実施
指定の葬儀社や火葬場で、最低限の葬儀を行う。 - 支給
実際の費用は福祉事務所から業者に支払われる形、または一旦立て替えて後日支給を受ける形など自治体によって異なる。
注意点として、後から申請するのではなく、事前に役所へ相談することが基本です。勝手に葬儀を行った後に支給を求めても、認められない場合が多いので要注意です。
4. 浄土真宗の視点:葬儀の規模よりも心が大切
浄土真宗の「他力本願」では、人の往生は阿弥陀如来の本願によって定まるため、葬儀の大きさや豪華さが成仏を左右するわけではないと考えます。
そのため、生活保護受給者が葬儀に費用をかけられなくても、「最低限の葬儀」であって故人を偲ぶ気持ちや念仏を通じた心の在り方が何よりも重要です。
葬儀の規模や形式よりも、家族や周囲が故人を想う気持ちに重きが置かれるのが浄土真宗の立場と言えるでしょう。
5. まとめ:扶助を活用して負担を減らす
- 葬祭扶助: 生活保護の一環として、簡素な葬儀に必要な費用が支給される制度。
- 金額: 自治体ごとに差があるが、15万~20万円程度が一般的。
火葬や最低限の葬儀に必要な費用をまかなえる。 - 注意点:
- 必ず事前に福祉事務所へ相談
- 勝手に葬儀を行うと不支給の可能性
- 適用範囲は最低限の費用のみ
- 他力本願(浄土真宗): 葬儀の豪華さが往生を左右するわけではない。
心を込めた供養が最も大切。
生活保護を受給している方や、その扶養義務者が亡くなった場合でも、葬祭扶助を利用すれば、最低限の葬儀を行うことが可能です。
浄土真宗で言うところの「人は阿弥陀如来の光に守られている」という発想からすれば、費用や規模にこだわるのではなく、故人を想う気持ちを大切にできれば十分に供養となるでしょう。
経済的に厳しい状況でも役所へ早めに相談し、制度を活用して負担の少ない葬儀を整え、故人を穏やかに見送ることを心掛けてください。
参考資料
- 生活保護法(葬祭扶助に関する条文)
- 『教行信証』 親鸞 聖人
- 『歎異抄』 唯円
- 各自治体の福祉事務所ウェブサイト(葬祭扶助の詳細)
- 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式情報