降誕会(親鸞聖人誕生)とは? 行事の由来

目次

1. はじめに:降誕会の意味

浄土真宗を開いた親鸞聖人の誕生日とされる5月21日(旧暦)前後に行われる行事が「降誕会(ごうたんえ)」です。これは、親鸞聖人の生誕を祝うと同時に、阿弥陀如来の本願による救いを改めて認識し、念仏の精神を再確認する機会として、大切にされてきました。
親鸞聖人は浄土真宗の宗祖であり、その教え「他力本願」は多くの人々を励ましてきた歴史があります。降誕会は、その聖人が生まれた意義を見つめ直し、私たちも同じ救いの道に立っていることを学ぶ行事とも言えます。

2. 親鸞聖人の誕生:歴史的背景

親鸞聖人は1173年(承安3年)に京都で誕生したと伝えられています。父は日野有範、母は吉光女であるとも言われていますが、正確な出自には諸説あります。いずれにしても、歴史的に見れば平安時代末期から鎌倉時代への変革期にあたり、社会が大きく揺れ動く中で育ったわけです。
親鸞聖人は9歳で出家し、比叡山で修行を積んだのち、法然上人との出会いを経て「専修念仏」に深く共鳴します。流罪や各地での布教を通じて「他力本願」を徹底し、その教えがのちに浄土真宗として結実しました。降誕会は、そんな聖人の誕生に感謝しつつ、その功績を偲ぶ行事なのです。

3. 降誕会の由来と歴史

降誕会がいつから始まったか正確には定かではありませんが、親鸞聖人の命日を中心に営まれる報恩講などと同様、祖師の功績を記念する法要として、時代とともに形成されてきたと考えられています。
特に江戸時代には、蓮如上人の布教活動の影響もあって真宗教団が急速に拡大し、「親鸞聖人の生誕を祝う」という趣旨で各寺院が独自に降誕会を営むようになったとされます。現代では、本願寺派(西本願寺)、真宗大谷派(東本願寺)など、それぞれの教団が正式に法要を行い、門徒家庭でも参拝や記念行事が行われます。

4. 降誕会の時期と法要のスタイル

親鸞聖人の誕生日とされる5月21日が中心ですが、寺院の都合や地域行事との兼ね合いで、5月中〜下旬に降誕会が行われるケースも多くあります。大きな寺院では数日にわたって法要や法話が催され、宗祖誕生の意義を改めて説く場が設けられます。
法要のスタイルは各寺院で若干異なりますが、正信偈恩徳讃などの読経のほか、稚児行列(子どもたちが装束を着て行列する)や法楽の時間が設けられることも。親鸞聖人を象徴するようなご絵像(御影)を本堂に掛け、飾り付けを施して華やかな雰囲気になるのが特徴です。

5. 降誕会で何をする? 基本の流れ

1. 本堂の飾り付け
親鸞聖人の御影を中央に飾り、花や緑で華やかにする。

2. 法要
僧侶が読経を行い、聖人への感謝と阿弥陀如来の本願を再確認する。

3. 法話
住職や他の僧侶が、親鸞聖人の生涯や教えの意義を分かりやすく説く。

4. お斎(おとき)
大きな寺院では、参加者に精進料理を振る舞い、共に食事をすることで法要の喜びを共有する。

これらの行程を通じて、聖人の教えを現在の自分の生活にどう生かすかを考える機会となります。

6. 子どもたちへの教育的アプローチ

降誕会は、親鸞聖人の生涯を子どもたちに伝える絶好のチャンスでもあります。多くの寺院や真宗系の幼稚園・学校では、「こども降誕会」といった形で

  • 紙芝居
  • スライドショー
  • 人形劇

など、子ども向けのプログラムを用意して聖人の歩みや教えを分かりやすく紹介します。
これによって、幼少期から仏教や念仏に親しみを持つ子どもが増え、地域コミュニティの中での連携も深まる効果があります。

7. 現代における降誕会の意義

親鸞聖人が生きた時代は鎌倉期の社会変革期であり、その教えは「煩悩を抱えたまま救われる」という力強いメッセージを現代にも残しました。
降誕会は、そのような聖人の教えを改めて学ぶ場であると同時に、「自分の人生観をどう見直すか」を考える機会ともなります。人々が仕事や家事、学業などの日常から少し離れて仏法に耳を傾け、他力の安心を実感するための行事として、現代でも多くの人が参詣します。

8. 準備や参加のポイント

降誕会に参加したり、開催する際の留意点としては:
1. 日程の把握:寺院によって開催日が若干異なる場合があるので、事前にスケジュールを確認。
2. 仏堂や御影の飾り付け:華やかな花や装飾で、聖人への感謝を表す。
3. 子ども向け企画:紙芝居やワークショップを取り入れると、家族連れでも参加しやすい。
4. お斎(おとき)の用意:精進料理や地域の食材を使った献立を考慮し、参加者同士の交流を深める場にするとよい。

9. まとめ:親鸞聖人の誕生を祝う降誕会

降誕会は、親鸞聖人の誕生を祝うとともに、その教えを学ぶ大切な機会です。
– 親鸞聖人が示した「他力本願」「悪人正機」などの教えを理解し、現代の自分の生活に活かす。
– 法要や法話、そして子ども向け行事やお斎などを通じて、多世代が一堂に集まり、念仏を通じた共同体の連帯を深める。
– 華やかな飾り付けや伝統的な儀式を楽しみながら、「阿弥陀仏と聖人への感謝」という浄土真宗の信仰を再確認する。
こうした意義を改めて噛みしめることで、降誕会は浄土真宗の教えが生き続ける貴重な行事として、多くの人の心をつなぎ続けているのです。

参考資料

  • 『教行信証』 親鸞聖人 著
  • 『歎異抄』 唯円 著
  • 『蓮如とその布教』 田村和朗 著
  • 本願寺派・真宗大谷派 公式サイト(降誕会情報)
  • 各寺院の降誕会パンフレット・行事案内
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