数珠の種類と選び方:葬儀向けのマナー

目次

1. はじめに:数珠(念珠)の意義

数珠(念珠)は、仏教のさまざまな儀式や修行の場面で使われる道具であり、合掌や読経、念仏の際に手に持つことで、仏との縁を感じたり、煩悩を数える象徴とされたりする場合があります。
浄土真宗では、他力本願を基本とするため、「数珠で煩悩を断つ」という意識は強調されませんが、それでも葬儀や法要の場で数珠を持つことは基本的なマナーとして定着しています。本記事では、浄土真宗の視点から見た数珠の種類と選び方、そして葬儀の場における数珠マナーについて解説します。

2. 数珠の基本構造と種類

一般的な数珠には、大きく分けて以下のようなタイプがあります:

  • 片手念珠(略式念珠)
    片手で持てるような小さめの数珠で、日常のお勤めや略式の法要に用いられる。珠の数は厳密ではなく、108珠の代わりに数を減らして作られている。
  • 二連数珠(本式念珠)
    108珠を基本とした正式な形で、二連になっている(輪が二つ重なっている)タイプ。修行や読経において「煩悩の数を108珠で象徴する」という考え方がベースにあるが、浄土真宗でも男性はこのタイプを用いることが多い。
  • 女性向け念珠
    紅水晶や真珠などで装飾的に作られたものが多く、房(ふさ)の部分が小ぶりで、片手念珠の形を取ることが多い。

宗派によっては「玉の数や房の色」にこだわる場合がありますが、浄土真宗ではそこまで厳密なルールはありません。ただし、男性は二連、女性は片手念珠という風習がみられる地域や寺院もあるため、住職や周囲に確認するのが無難です。

3. 浄土真宗で用いられる数珠の特徴

浄土真宗では以下のような数珠がよく使われます:

  • 男性用二連念珠
    108珠を基本とした本式二連念珠。親珠四天珠など、正式な構造を持つが、戒律による修行(煩悩を断つ)ではなく、念仏の際に手に持つ道具として使用する。
  • 女性用片手念珠
    珠数が略式になっており、見た目がコンパクト。房が小ぶりで、装飾に凝ったものも多い。葬儀や法要での利用を中心に、日常の念仏でも使われることがある。
  • 房の色
    緑や紫が好まれるケースもあるが、特に「必ずこの色」という決まりはない。喪服や場の雰囲気に合わせて、落ち着いた色を選ぶ人が多い。

浄土真宗の寺院で販売されている念珠を選ぶか、仏壇・仏具店に「浄土真宗用」として置かれているものを選ぶと、形や房の違いなどで混乱しにくいでしょう。

4. 選び方のポイント:素材・サイズ・価格

数珠を選ぶ際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう:

  • 素材
    木製(紫檀、黒檀など)や石(ローズクォーツ、瑪瑙など)、クリスタル系など様々。耐久性や手触り、予算を踏まえて選ぶ。浄土真宗では特定の素材を強く推奨するわけではないが、落ち着いた色合いのものが多い。
  • サイズ
    男性用と女性用で珠の大きさや全体の長さが異なる場合が多い。店頭で実際に手に当ててみて、握りやすさを確認するのがおすすめ。
  • 価格
    安価なものから高級品まで幅広い。葬儀や法要で長く使うことを考慮し、予算に応じて質の良いものを選ぶと良い。過度に豪華すぎるものは真宗の質素・質実の精神に反する、と感じる人もいるため注意。

5. 葬儀向けのマナー:持ち方と扱い方

浄土真宗の葬儀や法要で数珠を使う際に気をつけたいマナーは以下の通り:

  • 持ち方:
    焼香時や合掌時に左手首にかけておき、合掌するときは両手のひらで包むようにするのが一般的。ただし地域により異なるため、周囲の様子を見ながら合わせる。
  • 置き場所:
    テーブルや膝上などにむやみに放置せず、使用しないときは袱紗(ふくさ)や念珠袋に入れるなど丁寧に扱う。地面に直接置くのは避ける。
  • 焼香時の注意:
    浄土真宗本願寺派なら焼香は1回、大谷派なら3回など、回数や動作に注意しつつ、数珠を持ったまま合掌し、「南無阿弥陀仏」を心に称える。

いずれも合掌と念仏の姿勢を崩さずに、故人や阿弥陀仏への敬意を示すことが大切です。

6. 使い方のタブーや注意点

数珠は仏と縁を結ぶ大切な道具とされるため、以下のような行為は避けるべきです:

  • 人に渡す際に放り投げたり、地面に置きっぱなし:
    丁寧に扱わないと、故人や阿弥陀仏への姿勢にも影響していると見られる場合がある。
  • アクセサリーとして使う:
    数珠ブレスレットなどが市販されているが、葬儀場でファッション的に見せびらかすのは避ける。正式な数珠と区別した方が良い。
  • 異なる宗派専用数珠の混用:
    混乱を招くため、浄土真宗の行事では、できれば真宗用の数珠を持参する。やむを得ない場合もあるが、僧侶や周囲に確認しておくと安心。

7. まとめ:数珠で示す浄土真宗の姿勢

浄土真宗の葬儀向けに数珠を選ぶ場合、男性は二連の本式念珠、女性は片手念珠が多く、素材や色は落ち着いたトーンが好まれます。
– **数珠は煩悩を断つためより、阿弥陀仏のご縁を感じる道具**
– **葬儀や法要で正しく扱うことで、亡き方を偲び、念仏を称える心が深まる**
– **他力本願の精神を忘れずに、過度な装飾や乱暴な扱いは避ける**
こうしたポイントを踏まえ、正しい数珠選びとマナーを守ることで、浄土真宗の教えに沿った厳粛で温かい葬儀を実現できるでしょう。

参考資料

  • 『教行信証』 親鸞聖人 著
  • 『御文章』 蓮如上人 著
  • 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式サイト
  • 数珠・念珠に関する仏具店資料
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