外国在住の場合のお墓:どうする?

目次

1. はじめに:海外在住とお墓の問題

グローバル化が進む現代、海外で暮らす日本人や日系人は増え続けています。しかし、いざ身内が亡くなった際に、日本に帰国してお墓の継承や管理を担うことが難しいというケースも珍しくありません。
浄土真宗では「亡くなった方は阿弥陀仏の本願によってすでに往生している」と考えるため、「お墓がどこにあるか」が救いに影響しません。しかし、残された家族がどのように供養を続けやすいかを考える上で、海外在住者にとってのお墓問題は大きな課題です。本記事では、外国在住の場合にお墓をどうするか、その選択肢やポイントを解説します。

2. お墓を日本に置くか、海外に置くか

海外在住の場合、まず検討すべきは「お墓を日本に置き続ける」か「海外で埋葬する」かという点です。それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。

  • 日本に置く
    メリット: 親族や本家のお墓とまとめて管理できる。
    住職や寺院、親族との関係を維持しやすい。
    デメリット: 海外在住者本人が墓参りしにくく、後継者管理の負担を日本側の親族に頼ることになる。
  • 海外で埋葬
    メリット: 現地で生活する家族が供養管理を行いやすい。
    近年は海外にも日本人向けの霊園や納骨堂が存在。
    デメリット: 海外の埋葬法規制や、宗教文化の違いへの対応が必要。
    日本の親族が参拝しにくい。

3. 遺骨を海外へ移す(持ち出す)場合

海外でお墓や納骨堂を利用する場合、日本から遺骨を海外へ送る手続きが必要です。主に以下のステップが考えられます:

  1. 在住国の法規制
    – 遺骨の輸入を認めているか、どのような書類が必要かを確認。
    – 「死体(遺骨)輸入許可証」など、国によって異なる規定がある。
  2. 日本の出国手続き
    – 遺骨を飛行機の手荷物や貨物として持ち出す際、航空会社や税関への申告が必要なことがある。
  3. 改葬許可
    – もし日本の墓地から遺骨を移す場合、改葬許可証が必要。
    – 改葬の一環として海外へ移転するケースも多い。
  4. 現地での受け入れ先
    – 現地の霊園や寺院、または民間の納骨施設と契約し、受け入れ証明を取得。
    – 宗教や文化の違いに注意し、法的な埋葬手続きを踏む必要がある。

国際的な運搬には費用もかかるため、航空券運送保険などの見積もりを取り、事前に準備を進めましょう。

4. しばらくは日本に置き、将来移転を検討する方法

「すぐに海外でのお墓を準備できない」「費用や手続きが複雑」という場合、いったん日本で埋葬や納骨を行い、後から改葬で海外へ移す選択肢もあります。

  • 一時的に永代供養:
    – 日本の寺院墓地や納骨堂で永代供養してもらい、家族の準備が整った時に海外へ遺骨を移す。
  • 後から改葬許可を取得:
    – 日本で法的に改葬許可証を取得し、遺骨を持ち出す時期をコントロールできる。
    – 親族が日本に多く、すぐに移転に同意しにくい場合にも有効。

5. 海外でも真宗の法要や念仏は可能

浄土真宗は日本発祥の宗派ですが、北米南米アジア各地など、世界中に真宗寺院や門徒コミュニティがあります。
– **海外の真宗寺院**: アメリカ合衆国の本願寺派大谷派、カナダや南米など多くの地域で活動。
– **オンライン法要**: コロナ禍以降、オンラインで住職に法要を依頼するケースも増え、海外からの参加が可能。
よって、海外在住でも、念仏を称え、法要を行う環境を整えやすくなっています。お墓が海外にあっても、阿弥陀如来の光は何ら変わりなく届くと捉えられます。

6. 日本のお墓を処分する場合の注意点

もし海外に永住する意向があり、日本のお墓を処分(墓じまい)する場合、以下の点に注意が必要です:

  • 親族の同意:
    – 本家や分家などが絡む場合、必ず合意を得る。
    – 無断で墓じまいを進めると後々トラブルになる。
  • 改葬許可証:
    – 日本から遺骨を動かす際には改葬許可証が必要。
    – 火葬場や自治体の窓口で手続きを行う。
  • 寺院や霊園への清算:
    – 年間管理費や檀家費など、滞納分があれば支払いを済ませる。
    – 墓地の永代使用権を返還する際の手続きも確認する。

7. まとめ:海外在住でのお墓対策

外国在住の場合のお墓:どうする?」という課題は、増加傾向にある海外在住日本人や日系人にとって無視できない問題です。
浄土真宗では、「遺骨の場所」が往生を左右しないため、残された家族が念仏を通じて安心できるよう最適な方法を選ぶのが理想です。選択肢としては:

  • 日本にお墓を残す: 親族が管理してくれるなら問題なし。自分自身はオンラインや一時帰国で法要・墓参りを行う。
  • 海外にお墓を移転: 法的手続きを経て改葬許可証を取得。現地の霊園や納骨堂に入る。
    そこでも真宗の法要・念仏は可能。
  • 墓じまい + 永代供養: 日本の寺院や霊園に永代供養を依頼し、自分は海外で別途供養を行う。

最終的には、親族との合意現地の法規費用などを総合的に検討して決定しましょう。
いずれの方法を選んでも、阿弥陀仏の光に支えられている事実は変わりなく、念仏を通じて故人とのご縁を深めることが肝要です。

参考資料

  • 『教行信証』 親鸞 聖人 著
  • 『歎異抄』 唯円 著
  • 日本国外の真宗寺院情報(北米・南米・アジアなど)
  • 各自治体・航空会社の遺骨輸送ガイド
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