はじめに
浄土真宗では、宗祖・親鸞聖人への感謝を表す報恩講(ほうおんこう)が1年の中でも最も大きな行事として営まれます。寺院や地域によって開催時期は異なるものの、11月28日の親鸞聖人のご命日を中心に、数日間にわたって盛大な法要が行われることが多いです。
そんな報恩講には、大人だけでなく子どもと一緒に参加してみるのもおすすめです。子育て中の家庭が親子で報恩講に参加すると、いったいどのような意義があるのでしょうか? 本記事では、親子での参加を通じて得られるメリットやポイントを紹介します。
1. 報恩講とは:親鸞聖人への報恩謝徳
報恩講は文字通り、「恩に報いる法要」であり、ここでの「恩」とは、「ただ念仏すれば救われる」という教えを示してくれた親鸞聖人への感謝を指します。
具体的には、
- 正信偈や経典の読誦
- 法話(講師や住職による説教)
- 焼香や念仏
といった儀式が行われ、「阿弥陀仏の本願によってすでに往生が定まっている」ことを門徒同士が改めて確認し合う場でもあります。さらに、お斎(会食)や地域ごとの催し物など、コミュニティの交流の場にもなっているのが特徴です。
2. 親子で報恩講に参加するメリット
子どもを連れて報恩講に参加することで、親子それぞれに以下のようなメリットや意義があります。
- 子どもが仏教文化に触れる:
- 読経や焼香、念仏など、普段の生活とは違う神聖な雰囲気を体験する。
- 親鸞聖人や阿弥陀仏の教えに出会うことで、**宗教的な背景**に興味を持つきっかけとなる。
- 家族が同じ空間で念仏を称える:
- 報恩講は**大勢の門徒**が集まるので、**「自分たちだけではない」**と感じ、安心や一体感を得られる。
- 親子で声を合わせて念仏し、**「ただ念仏」で救われる**教義を共有できる。
- 地域コミュニティとの交流:
- 報恩講は**地域の門徒同士**の交流が盛ん。子ども同士が出会って**友だち**になる可能性も。
- 親同士も、**子育ての相談**や仏教教育に関する情報交換ができる。
3. 子どもの興味を引く工夫
報恩講は、子どもにとっては長時間の読経や法話が退屈に感じるかもしれません。しかし、以下のような工夫で、子どもも楽しみながら参列できることがあります。
- 子ども向け法話:一部の寺院では、子ども向けに短めの法話や絵本の読み聞かせを行う場合がある。
住職や青年会が工夫して、アニメやイラストを使うケースも。 - 絵解きや仏教紙芝居:仏教の物語を**紙芝居**や**パネルシアター**で演じると、子どもが興味を持ちやすい。
- 短い滞在時間:子どもの集中力が続かない場合は、**読経や焼香だけ**参加して、一旦退出するという柔軟なプランもOK。
4. 親が意識したいこと
親としては、子どもに「報恩講を理解させる」ことを全面目標にしなくても大丈夫です。以下の点を意識するだけでも、子どもに宗教的感受性を育てるきっかけとなるでしょう。
- 無理強いしない:子どもが騒いだり飽きたりしたら、一旦外に連れ出すなど、**負担にならない**よう配慮。
- 簡単な説明:**「親鸞聖人にありがとうする日だよ」**とか、**「阿弥陀さまの光がみんなを包んでいるんだよ」**など、子どもの理解に合わせた言葉で説明してみる。
- 短い法話で構わない:長い法話は大人でも退屈することがある。子どもが理解できる範囲で、**一緒に聞けるだけ**でも十分。
5. 家庭でのフォロー:念仏と絵本など
報恩講で触れた仏教の教えは、**一度きり**の体験だけでは定着しにくいです。帰宅後や日常生活でも、以下のようなフォローをすると良いでしょう。
- 念仏の習慣化:朝夕の合掌や、お内仏(仏壇)に手を合わせるタイミングで、子どもと一緒に**「南無阿弥陀仏」**を称える。
- 仏教絵本・読み聞かせ:子ども向けに書かれた**仏教の絵本**や**親鸞聖人の物語**を、寝る前などに読み聞かせ。
**阿弥陀さま**や**念仏**のイメージが育つ。 - 会話の中で引用:日常会話で、**「阿弥陀さまが見守ってるね」**などの表現を取り入れ、**宗教観**を少しずつ馴染ませる。
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まとめ
親子で報恩講に参加する意義は、子どもが念仏や仏教文化を身近に感じると同時に、親自身も「ただ念仏」という教えを再確認することにあります。
1. 報恩講は親鸞聖人への感謝の法要であり、阿弥陀仏の救いを再確認する場。
2. **子ども**が参加することで、**仏教体験**や**地域コミュニティとの交流**が可能。
3. 長い読経や法話に飽きないよう、**子ども向け法話**や**短い滞在**も視野に入れる。
4. 家庭でのフォロー(念仏の習慣や絵本の読み聞かせ)で、**継続的に仏縁を育む**。
ぜひ、報恩講を家族みんなで味わいながら、**阿弥陀如来の光と共に育む子育て**を実践してみてください。
参考資料
- 浄土真宗本願寺派(西本願寺) 公式サイト
- 真宗大谷派(東本願寺) 公式サイト
- 寺院で配布される子ども向け「報恩講しおり」
- 本願寺出版社『正信偈のこころ』