「就活」と聞くと多くの人は「就職活動」を思い浮かべますが、近年「終活（しゅうかつ）」という言葉が広まり、ネット検索などで「就活と終活を勘違いする」ケースがよく見られます。実際に、「就職の話かと思ったら死後の話だった」という笑い話もあるほどです。
しかし、終活は決して高齢者だけのものではありません。若い人こそ「自分の人生をどう生き、どう締めくくるか」を早めに考えることが、日々を充実させるヒントになるのです。本記事では、「若者にも知ってほしい終活」の重要性について、浄土真宗の「他力本願」の考え方を交えながら解説します。
1. なぜ若者に終活が必要なのか
一見すると「終活＝高齢者や病気のある人向け」と思われがちですが、若い世代にも以下のようなメリットがあります。
- 1. 人生設計を明確にできる
– 「自分は何を大事にして生きたいか」「将来どのような形で周囲に影響を残したいか」といった大きな視点で考えるきっかけになる。
– いわば「自分のゴール像」を持った上で日々を過ごせるので、ブレにくい人生設計がしやすくなる。 - 2. 万が一に備えられる
– 事故や病気など、年齢を問わず突然起こる可能性がある。
– 何も準備していないと家族や友人が戸惑うが、最低限の情報や意向を共有しておけばトラブルを避けやすい。 - 3. 今の生き方に集中できる
– 死後のことを意識するからこそ、「限りある時間」を実感し、今を全力で生きようというモチベーションが高まる。
2. 「就活」と「終活」の違い
「就活（就職活動）」は、企業への応募や面接を通じて、仕事を見つける活動のこと。一方「終活」は、自分の死後を含めた人生の整理を指し、エンディングノート作成や財産・心の整理を行う活動です。
似たような響きですが、まったく異なる分野です。しかし、どちらも人生の転機を迎える準備という点では共通点があります。若者にとって「就活」に力を入れるのは当然ですが、「終活」の考え方を少し取り入れることで、自分の価値観を深く理解し、仕事選びやライフスタイル選びにも積極的な影響を与えるかもしれません。
3. 若い世代ができる終活の具体例
「終活」と言っても、必ずしも「遺言書作成」や「葬儀の打ち合わせ」といった高齢者向けの内容ばかりではありません。若者ならではの視点や実情に合わせて、シンプルかつ柔軟に取り組むことが可能です。
- 1. デジタル遺産の管理
– SNSやメール、クラウドサービスなど、アカウント情報をどこかにまとめておく。
– 友人や家族に共有するかどうか、死後にどう処理してほしいかを軽く考えておくだけでも十分。 - 2. エンディングノートのライト版
– 自分史や将来の夢、万が一に備えた連絡先や希望する医療方針などを、ノートやアプリにメモしておく。
– 宗教的な意識があるなら、葬儀の形式やお墓についての希望を簡単に書いておくのも良い。 - 3. 写真やメッセージ動画の整理
– 若者ほどスマホに大量の写真や動画を保存している。本当に残したいデータを整理し、クラウドや外部ストレージにバックアップしておく。
– 家族や友人への“もしもの時用”ビデオメッセージを残すのも一案。
4. 浄土真宗の「他力本願」で得られる安心
終活は「死」に向き合う活動だけに、どんな世代でも不安を伴うものです。しかし、浄土真宗の「他力本願」を理解していると、何もかも自力で完璧にする必要はないという安心感が得られます。
– **「仏にお任せ」の発想**: 若い人でも、突然の事故や病で倒れるケースはゼロではありません。万が一の時に、「最終的には阿弥陀如来にお任せ」という視点を持てば、強い恐怖心に支配されずに済みます。
– **今を大切に生きる**: 死を意識することは、反対に「今をどう充実させるか」に直結します。念仏を唱える習慣を取り入れて心を落ち着ければ、仕事や学業にも集中しやすくなるでしょう。
5. 誤解を解く：終活は「年配者だけのもの」ではない
就職活動との混同もあり、終活を「お年寄り向けのもの」と捉えてしまう若者は少なくありません。
– **若者でも身近なリスク**: 交通事故や突然の病気など、いつ何が起こるかわからないのが人生です。最低限の希望や情報をまとめておくだけでも、家族に迷惑をかけにくい。
– **人生の方向性を明確化**: 就職活動をする際、自分がどんな生き方をしたいのかが明確になっていると、仕事選びにおいても軸ができ、自分らしいキャリアを築きやすい。
– **周囲とのコミュニケーション活性化**: 終活の一環として家族や友人と話す機会が増えると、親との関係や友人との絆が深まることも期待できます。
6. まとめ：若者にも終活がもたらすプラス
- 死への恐れが減り、今を全力で生きられる
- 万が一のトラブルで周囲が戸惑わない
- 浄土真宗の他力本願を活かし、安心感を得る
終活は決して高齢者だけが行うものではありません。若者が「就活」と間違えるように、「終活」という言葉自体に敷居の高さを感じるかもしれませんが、実はどの世代にとっても有益な活動です。
浄土真宗の教えを背景に、「すべてを自分で完璧にする必要はない」という“他力本願”の安心感を得ながら、死生観を明確にし、今を最高に生きる一歩として終活を試してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 『教行信証』 親鸞 聖人
- 『歎異抄』 唯円
- 若者向け終活セミナー・体験談
- 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式サイト
