親子間で相続を話し合う手順

はじめに

相続は家族全員が納得できる形を目指したい一方で、「縁起でもない」という思いから、生前にはあまり話題にしづらいケースがあります。
しかし、遺産分割や財産管理をめぐるトラブルの多くは、死後に家族が初めて相続について話し合うことで火種が生まれがちです。
そのため、親と子どもが相続を話し合う手順を早めに共有しておくことが、**「争族」**の回避にも大きく役立ちます。
本記事では、浄土真宗的視点も交えながら、親子が円満に相続を話し合うための具体的ステップを解説します。

1. 話し合いのタイミングを決める

相続の話を切り出すタイミングは非常に重要です。唐突に話題を出すと、親やほかの子どもが不快感を抱く可能性もあるため、以下のような配慮が大切です。

• 家族が集まりやすい時期を活用：
  • お盆や正月など、**全員が帰省して落ち着いて話せる時期**に計画を立てる。
• 健康なうちに：
  • 親の体力や意識がはっきりしているうちに、**早め**に話し合いを始める。
    「縁起でもない」という反発を受けないよう、**「将来に備えての相談」**と前向きに説明する。

2. 事前準備：財産リストや相続人の確認

話し合いがスムーズに進むよう、財産の状況や相続人の範囲をあらかじめ把握しておくとよいでしょう。

• 財産の一覧を作る：
  • 不動産、預貯金、有価証券、動産（車や宝飾品など）を簡単にリスト化し、だいたいの評価額を把握する。
  • 借金やローンがある場合も**負債**として明記しておく。
• 相続人の確認：
  • 配偶者、子ども、父母、兄弟姉妹など法定相続人の順序を理解し、誰が相続に参加するかを把握する。

3. 話し合いのステップ

親子間で相続を話し合う際、具体的にどのように進めればよいのでしょうか？ 以下のステップを参考にしてみてください。

• 1. 全員の意見を聞く：
  • まず、**全員が納得できる場**を設定し、誰か一方的に話すのではなく、自由に意見を出し合う雰囲気を作る。
  • 話し始めに「今日はみんなで将来のことを考えたい」と趣旨を伝えるとわかりやすい。
• 2. 財産の希望・意向を共有：
  • 親は「この家は誰に継いでほしい」などの希望を示し、子は「自分は実家を守れない」と正直に伝える。
  • 必要があれば寺院や弁護士・司法書士などの専門家に同席してもらうと、公平な視点を得やすい。
• 3. 親の意思決定を尊重：
  • 相続は基本的に被相続人（親）の意思が優先される。
    ただし、**遺留分**に配慮し、子どもたちとの調整も必要。
• 4. 遺言書や生前贈与の検討：
  • 最終的に遺言書を作成し、**法律的にも有効**な形で親の意思を残す。
  • 生前贈与や手元供養などの選択肢も話し合い、**具体的な合意**をまとめる。

4. 浄土真宗の教えを活かすポイント

相続はお金や物が中心の話題になりがちですが、浄土真宗の教えを取り入れると「物を超えた価値」や絆を再確認する機会にもなります。

• 念仏で落ち着いた心を保つ：
  • 「南無阿弥陀仏」と唱えて、煩悩（欲・怒りなど）を客観視する。
    家族会議の前後に念仏の時間を設けることで、**和やかな雰囲気**を保ちやすい。
• 「財産は仮のもの」という視点：
  • 阿弥陀仏の光に照らされている私たちは、**縁によって財産を得ている**と捉え、過度な執着を抑えることができる。
    **「分かち合う」**という姿勢が話し合いを円満にする。

5. まとめ

親子間で相続を話し合う際は、早めの準備と適切な手順が重要です。
– まず、家族が集まりやすいタイミングを見計らい、財産リストや希望を共有。
– 念仏を通じて、阿弥陀仏の光に包まれていると感じながら、**財産への執着**を和らげる。
– 遺言書や生前贈与の選択肢を検討し、法的に有効な形でまとめる。
こうしたステップを踏み、**心穏やかに**相続を決めることで、家族の絆を深め、阿弥陀仏の慈悲を感じられる終活を迎えられるはずです。

参考資料

• 相続や終活に関する専門書、弁護士・司法書士のサイト
• 浄土真宗本願寺派 公式サイト
• 真宗大谷派（東本願寺） 公式サイト
• 本願寺出版社『正信偈のこころ』