終活を進めるにあたり、多くの方が最初に取り組むのが「エンディングノート」の作成です。しかし、書店やネットを見ればいろいろな種類のエンディングノートが並んでおり、「どれを選べばいいの?」と迷ってしまう人も多いでしょう。また、エンディングノートは自分で作成するという選択肢もあり、市販品と自作のどちらがいいのか悩む声も聞かれます。
本記事では、市販のエンディングノートと自作ノートのメリット・デメリットを整理し、浄土真宗の「他力本願」を踏まえた心構えをどう取り入れれば、スムーズにノート作成を進められるかを解説します。
1. エンディングノートが持つ役割
まず、エンディングノートの役割を再確認しておきましょう。主な目的は、自分の死後に家族や関係者が困らないよう情報を整理し、自分の意向を伝えることにあります。具体的には、以下の内容を記録することが多いです。
- 財産・保険・口座情報(銀行、証券、保険、年金など)
- 介護や医療の希望(延命治療、介護施設の検討など)
- 葬儀やお墓の希望(規模、宗派、式場、永代供養など)
- デジタル資産(SNS、メール、ネット口座の管理情報など)
- 家族へのメッセージ(感謝、思い出、残しておきたい言葉)
こうした情報を一冊にまとめることで、死後のトラブルを防ぎ、家族がスムーズに対応できるようになります。また、浄土真宗の教えを背景に持つなら、「阿弥陀如来の光のもとで、死を恐れず穏やかに準備する」というスタンスをエンディングノートの作成過程で活かすこともできるでしょう。
2. 市販のエンディングノート:メリットとデメリット
書店やネットで入手できる市販のエンディングノートは、あらかじめ項目や質問が整理されているため、初心者にも書き進めやすいのが特徴です。具体的なメリットとデメリットを挙げてみましょう。
- メリット
– **項目が網羅的**: 葬儀、お墓、相続、医療、家族へのメッセージなどがひととおり揃っている。
– **書きやすいデザイン**: 行間や見出しが設計されており、書き込むだけで形になる。
– **追加の情報やコラム付き**: 法律上の注意点や、葬儀の流れ、エンディングに関するコラムなどが付属している場合が多い。 - デメリット
– **不要な項目がある場合も**: 市販ノートは万人向けに作られているため、自分に関係ない項目が含まれることがある。
– **独自性が出しにくい**: デザインやページ構成が固定されているため、自由にアレンジしたい場合は不向き。
– **宗教的要素が薄い**: 浄土真宗など特定の宗教的視点を盛り込む項目が少なく、宗教行事や法要に関する内容をカバーしきれないこともある。
3. 自作エンディングノート:メリットとデメリット
一方、自分でノートを作成する、自作の形を取る選択もあります。ワープロソフトなどを使い、自分だけの項目やデザインでノートを作る方法です。
- メリット
– **自由度が高い**: 自分に必要な項目だけを作成できるため、無駄がない。
– **宗教的要素を盛り込める**: 浄土真宗の葬儀や法要に関する詳細、念仏や感謝の言葉などを自由に追加できる。
– **更新が簡単**: デジタル形式なら修正や追加が容易。紙媒体でもインデックスを付けるなど工夫すれば管理しやすい。 - デメリット
– **設計が面倒**: どの項目が必要か、自分で一から決めるため、全体像を把握していないと書き漏れが生じる恐れ。
– **ページレイアウトなどを整える手間**: ワープロソフトに慣れていない場合は苦戦する。
– **ガイドがない**: 市販品に付属する法的コラムや注意書きがないため、別途調べる必要がある。
4. 選び方のポイント:自分の性格や目的に合わせる
市販ノートか自作かを選ぶとき、自分の性格・目的・スキルを考慮すると失敗しにくいです。以下のポイントを参考にしてみてください。
- 1. 書く時間や労力に余裕があるか
– あまり時間が取れない、またはパソコン操作が苦手なら、市販のノートを使うとスムーズ。
– 逆に自由にカスタマイズしたい、パソコンが得意という人は自作が向いている。 - 2. 宗教的・個人的要素をどれだけ盛り込みたいか
– 浄土真宗の葬儀や法要を詳しく書きたいなら、自作ノートで思い通りの項目を作れる。
– 市販のノートでも、メモ欄に自分なりの追加情報を挟む工夫をすれば対応可能。 - 3. 親や家族と共有する予定があるか
– 家族に見せることを前提とする場合、誰でも読めて分かりやすいレイアウトが重要。市販ノートならルールに沿って書けば他人も理解しやすい。
5. 浄土真宗的視点をどう取り入れる?
エンディングノートを選ぶ際、浄土真宗の教えを反映したいなら、以下の内容を意識するとよいでしょう:
- 葬儀や法要に関する希望
– 浄土真宗の葬儀の流れや、どの寺院に依頼したいか、どういう式にしたいかなどを詳細に書く。
– 自作ノートなら、正信偈や念仏に関する記述も追加できる。 - 家族へのメッセージ
– 自分が生前に念仏をどう捉えていたか、死後の往生をどう考えていたか、家族に伝えておくと親族が安心する。 - 他力本願の考え
– 「すべてを完璧にしなくても最終的には仏にお任せする」という姿勢をノート上に記しておくと、家族が余計なプレッシャーを感じずに済む。
まとめ:自分に合ったスタイルでエンディングノートを選ぼう
「市販のエンディングノート」を選ぶか「自作」を選ぶかは、個人の性格や状況によって適正が異なります。どちらを選んでも構わないのですが、以下の点を意識すれば、より使いやすいノートが作れるでしょう:
- 時間や労力、スキルとのバランスをとる
– 余裕がないなら市販ノート、一から設計したいなら自作。 - 家族が読みやすいか
– ノートは基本的に「他人(家族)が読む」もの。分かりやすさを重視する。 - 浄土真宗の視点を活かす
– 自分が往生をどう捉えているか、法要や念仏への想いなど、宗教的な内容も追加。
エンディングノートは、死後のためだけのものではありません。今をどう充実させるかも見つめ直す道具でもあります。浄土真宗の「他力本願」を思い起こせば、すべてを自分で完璧にコントロールする必要はなく、最終的には仏の光の中で落ち着くという安心をもって、のびのびとノート作成に取り組めるでしょう。
参考資料
- 市販のエンディングノート各種
- 自作エンディングノートに関するブログや体験談
- 『教行信証』 親鸞 聖人
- 『歎異抄』 唯円 著
- 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式情報