他宗から改宗した理由:やはり他力本願に惹かれた

目次

はじめに

日本には多様な宗派や新宗教があり、家によっては先祖代々の信仰を受け継ぐケースが一般的かもしれません。しかし、現代では自らの意思で宗派を移ったり、あえて新たに学んだ教えに「改宗」する人も増えています。今回は、ある方がもともと別の仏教宗派の檀家でありながら、浄土真宗へ移籍(改宗)し、「他力本願」の教えに深く魅かれた理由と、その後の生活の変化を語っていただいたエピソードです。自分の価値観や人生を見つめ直した結果、新たな仏教観を手に入れる決断をしたリアルな声をご紹介します。


1. もともとは別の仏教宗派で育った

1-1. 子どもの頃から檀家として

Kさん(40代)は、もともと禅宗系の寺院の檀家として育ちました。幼少期から両親に連れられて、お盆や年忌法要などに参加し、坐禅体験や禅寺の行事にも何度か携わっていたとのこと。
「実家の家族はそこまで熱心ではなかったんですが、先祖供養や行事は当たり前のようにお寺でやっていました。だから自分も自然に‘うちは禅宗なんだな’と思って過ごしていたんです。」とKさんは語ります。

1-2. 大人になるにつれ疑問を持ち始める

しかし、大学生になり世の中の多様な宗教を知る機会が増えると、Kさんは「自分にとって仏教とは何か?」という疑問を抱き始めました。禅宗で教わった坐禅や戒律を含む修行のスタイルに対して、「自分には少し厳格すぎる」と感じたり、「もっと身近で救われる方法はないのかな」という思いが芽生えていったのです。
とはいえ、家族の手前もあり、強く反発するわけでもなく、漠然とした違和感を抱えながら社会人へと成長したと言います。


2. 浄土真宗に触れたきっかけ

2-1. 友人の家の法事が転機に

転機が訪れたのは、30代半ばの頃。Kさんが親しい友人の家の法事に参列したとき、そこが浄土真宗の寺院だったそうです。法要の中で 正信偈を皆が声を合わせて称え、「南無阿弥陀仏」の念仏が響き渡る空間に、Kさんは強い衝撃を受けました。
「禅宗のお経とはまた違う響きで、みんなが一体となって救いを実感しているような空気感があったんです。これは一言で言い表せないけれど、『あ、なんかここに私の探していたものがあるかも…』と思った瞬間でした。」

2-2. 住職の法話で「他力本願」を知る

そのときの法事の後、住職が話した「他力本願」の法話がKさんの心を強く打ちました。
他力って、自分の努力だけじゃなく、阿弥陀仏の大いなる力によって救われるという考え方じゃないですか。それがすごく楽になる感覚を与えてくれて、『ここなら私も本当に救われるかもしれない』と思えたんです。」
禅宗での修行や坐禅に感じていた“自分が頑張らなきゃ”というプレッシャーからの解放を、ここに見いだしたという話でした。


3. 改宗へのステップと周囲の反応

3-1. まずはお寺の行事に参加

Kさんは法事から帰った後も、その浄土真宗のお寺が気になり、報恩講定例法話などの行事に足を運ぶようになりました。すると住職や門徒の方々が「気軽に来てください」と温かく迎えてくれ、Kさんもますます浄土真宗の教えを深めたいと思うように。
「何度も通ううちに、いろいろな法話を聞いたり、悪人正機歎異抄を読む機会も増えました。そうしているうちに、『ああ、私が本当に求めていたのはこの救いなんだ』と確信するようになりました。」

3-2. 家族にはどう説明?

改宗を決める前に、Kさんは両親に相談しました。両親は「今さら何を?」という反応もありましたが、Kさんが真剣な表情で「禅宗を否定するわけではなく、私自身が他力に救われたいと思っている」と伝えると、最終的には「そこまで考えてるなら尊重するよ」と理解を示したそうです。
地域や親族には「宗派を変えるなんて…」と驚かれた部分もあったようですが、Kさん自身は「自分が納得する信仰を選ぶ権利はある」と強く思い、住職やお寺のサポートも得ながら手続きを進めました。


4. 改宗してみて感じた変化

4-1. お勤めや法事に参加が心から楽しく

改宗」というと難しく聞こえますが、Kさんの場合は実家の菩提寺には挨拶と謝意を伝えつつ離檀し、新たに浄土真宗のお寺に門徒として登録する形だったと言います。
「実際に改宗してから、自分がお寺のお勤め法要に参加するのがとても楽しくなりました。声を合わせて『南無阿弥陀仏』と唱えると、心が落ち着いて、『悪人正機の私でも救われている』と思えるんです。これがまさに私が求めていたものなんだと実感します。」

4-2. 家族や周囲との関係

Kさんの両親は今でも禅宗のお寺との付き合いを続けていますが、Kさん自身は浄土真宗の法座や報恩講に行くことに理解を示しており、むしろ「うちの娘は自分の道を見つけたらしい」と誇らしげに話すこともあるそう。
また、周りの友人からは「そんなに宗派って違うものなの?」と興味を持たれ、「他力本願って何?」と質問を受ける場面も増えたとのこと。Kさんは「自分の体験を語りながら、他の宗教や宗派を否定せずに説明するのは意外とやりがいがある」と笑います。


5. まとめ

他宗から改宗した理由:やはり他力本願に惹かれた」というKさんのエピソードからは、宗派という枠組みを超えた個人の信仰の探求が見えてきます。日本にはさまざまな仏教宗派があり、どれが正解というわけではありませんが、自分にフィットする教えを見つけることで心の安定や納得感が得られる例は決して少なくないのでしょう。
Kさんが語る「他力」の魅力は、「自分ひとりの力では救われない」と認めながらも、阿弥陀仏という大いなる慈悲に抱かれて生きていける、という安心感にあります。改宗を通じて実感した「救われ感」が、これからもKさんの人生を支えていくことでしょう。もし自身の信仰や宗派に疑問がある方がいれば、Kさんのように別の教えや寺院に足を運んでみるのも一つの選択肢かもしれません。

【参考文献・おすすめ書籍】

  • 親鸞聖人 著 『教行信証』 (浄土真宗の教義理解)
  • 歎異抄:岩波文庫版など
  • 各宗派の公式サイト:宗派の概要や分派歴史など

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