葬儀や法要のあとに行う「香典返し」や「会葬御礼」は、弔意や協力をしてくれた方々に対して謝意を示す大切な慣習です。
しかし、どのタイミングで、どのくらいの相場で準備すればよいのか、具体的なイメージが湧きづらい面もあるかもしれません。
本記事では、香典返しと会葬御礼の違い、おおよその相場や贈る時期について解説し、浄土真宗から見た考え方も含めて紹介します。
1. 香典返しとは?
「香典返し」は、故人の葬儀に際して香典(弔問客が遺族にお渡しする金品)を受け取った遺族が、後日お礼の品をお返しする習慣です。
- 目的: 参列者からのご厚意に対し、遺族の感謝を形で示す
- 相場: 一般的には「香典の半額~3分の1程度」とされる
(例)3万円の香典なら、1万円前後の品を - 時期: 忌明け(49日)を迎えてから贈るのが基本。
近年は会葬御礼と一緒に即日返し(当日返し)を行うケースも増えている
「忌明け」を一区切りとするのは、四十九日法要が終わることで喪が明けるとされる背景があり、その後に感謝を伝えるという流れです。
2. 会葬御礼とは?
「会葬御礼」(かいそうおんれい)は、葬儀や告別式に参列してくださった方々へ当日にお渡しするお礼の品です。
- 品物: タオルやお菓子、ハンカチ、石鹸など500円~1,000円程度のものが定番
- 渡し方: 式当日に参列者が受け取れるよう、受付や出口付近で手渡し
- 名目: 「会葬御礼」「粗品」と表書きされたのし袋などを添えることが多い
会葬御礼は、即日返しとも呼ばれ、香典返しを葬儀当日に済ませる形をとる場合もあります(この場合、より高価な品を用意して「香典返し」と兼ねる)。ただし、すべての地域で一般化しているわけではなく、従来の方法としては「会葬御礼」と「香典返し」を別々のタイミングで行うのがオーソドックスです。
3. 相場とタイミングまとめ
項目 | 相場 | 時期 | 目的 |
---|---|---|---|
香典返し | 香典の半額~3分の1程度 | 忌明け(49日法要)後に発送 近年は即日返しも増加 |
いただいた香典へのお礼 |
会葬御礼 | 500~1,000円程度 (地域や状況で変動) |
葬儀当日 (受付・出口で手渡し) |
葬儀への参列に対する 当日の感謝 |
4. 浄土真宗における香典返しの考え方
浄土真宗では、「故人は亡くなった瞬間に阿弥陀如来の本願によって往生が定まる」という考えがあり、香典そのものが「成仏を助ける」わけではありません。
それでも、「香典をいただいたらお返しをする」という日本の葬送文化は尊重され、「すべては人の支えによるもの」という他力本願の発想からも、
- 葬儀を支えてくれた方々へ謝意を示す
- 社会的にもお礼を交換することで絆を保つ
という意義を見いだすことができます。つまり、香典返しは「お金を返す」のではなく、「ご厚意に対する感謝」を伝える行為として受け取るわけです。
5. 実際の流れ:香典返しと会葬御礼
- 葬儀当日: 会葬御礼の品(ハンカチや菓子など)を受付・出口で参列者に配布する
- その後:
- ~49日法要までに香典の整理・リストアップ
- 「誰からいくらいただいたか」「住所や連絡先」を確認
- 忌明け(49日法要): 法要を終えた後、香典返しの品を発送・手渡し
- お礼状: 品に添えてお礼状を書くことが多い(「無事忌明けを迎えました」など)
一方、即日返し(当日返し)を行う場合は、事前に品を大量に用意し、会場で香典金額などを見ながら分配する形もありますが、地域によっては根付いていないので注意が必要です。
まとめ:感謝の気持ちを形にするのが大切
- 香典返し: いただいた香典へのお礼として、忌明け後(または当日返し)に品物を贈る。
相場は香典の半額~3分の1程度。 - 会葬御礼: 葬儀当日に参列者全員に配るお礼の品。
500円~1,000円程度が目安。 - 時期と方法: 通常は忌明け(49日)後に発送。事前にリストアップや品物の選定をしておくとスムーズ。
- 浄土真宗の視点: 香典返し自体が成仏を左右するわけではない。
「他力本願」の考えから、周囲への感謝として積極的に行われる。
「香典返し」と「会葬御礼」は、いずれも感謝を伝えるための儀礼です。特に浄土真宗では「亡くなった瞬間に往生」と説くため、戒律的な必要性はないものの、周囲の支えに対してしっかりと謝意を示すことが大切と考えられます。
相場や時期は地域・寺院・家族の意向で変わりますが、「故人を支えてくれた人たちへお礼をしたい」という気持ちを軸に、臨機応変に取り組んでみてください。
参考文献
- 『教行信証』 親鸞 聖人
- 『歎異抄』 唯円
- 葬儀マナー・香典返しに関する実用書
- 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式情報