オンライン説教に参加した海外在住者の声

はじめに

コロナ禍を経て、オンライン説教リモート法要が一気に普及しました。従来であれば寺院に直接足を運ばなければ聞けなかった住職の説法を、パソコンやスマートフォンを通じて世界中どこからでも視聴できるようになったのです。今回は海外に住むAさん(30代)に、オンライン説教に参加してみた感想や、現地で感じる仏教の存在、そして念仏を通じた心の支えの話を伺いました。物理的な距離を超えて、仏さまの教えを受け取る姿は、まさに現代ならではの浄土真宗の広がりを感じさせます。


1. Aさんの背景:海外在住の日本人

1-1. 留学を経て海外就職

Aさんは大学時代にアメリカへ留学し、卒業後はそのまま現地企業へ就職。その後、仕事の関係でほかの国に移動するなど、海外生活が約10年に及んでいるそうです。実家は日本国内の浄土真宗のお寺の近くで、幼少期から家族と共に法要などに参加する機会はあったものの、本人いわく「そこまで熱心ではなかった」とのこと。
しかし海外で暮らし始めると、日本の習慣や文化が懐かしくなり、次第に仏教に興味を持ち始めたと言います。「特にコロナ禍で孤独を感じたときに、念仏や浄土真宗の教えが恋しくなった」とAさんは振り返ります。

1-2. オンライン説教を知ったきっかけ

2020年頃から複数の日本の寺院がZoomYouTubeなどで法要や説教を配信し始めたことをSNSで知り、「これなら時差を考慮すれば参加できるのでは?」と興味を持ったそうです。ちょうどその頃、海外生活のストレスや日常の不安感が高まっていた時期で、「懐かしい日本のお寺の雰囲気に触れたい」「念仏を聞いて心を落ち着けたい」という思いが強くなり、ある浄土真宗のお寺が開催する「オンライン法座」にアクセスしてみたとのことです。


2. オンライン説教に参加した実際の様子

2-1. 時差との戦い

Aさんが住む地域と日本との時差は約7時間。
日本時間の夜8時開始の法座は、こちらではお昼1時になります。ちょうど昼休憩の時間帯なので、職場の休憩室や在宅勤務の日には自宅のPCで参加する形でした。時差があるのでベストな時間とは言えないけれど、週に1度のオンライン説教を待ち遠しく思っていました。」

2-2. Zoom法要とチャットでの交流

その寺院では、Zoomを使って法要と説教を配信しており、画面共有で経本のテキストを映し出してくれたり、住職の読経や合唱を視聴者が聴きながら心の中で唱えたりできるようになっていました。
「印象的だったのはチャット機能。司会の僧侶が『遠方からの参加の方はいらっしゃいますか?』と問いかけると、私を含め海外在住者が何人もコメント欄で『ドイツです』『アメリカ西海岸です』と返信し、住職が『世界中で念仏が繋がってますね』と喜んでくれたんです。リアルタイムの一体感は想像以上でした。」


3. 参加して得られた心の支え

3-1. 念仏の響きが懐かしく、安心感がある

Aさんは言います。「念仏の響きがこんなに懐かしいものだったとは思わなかった」。子どもの頃は退屈に感じた法要やお経も、海外暮らしの中で日本語が恋しくなると同時に、「南無阿弥陀仏」のリズムが強く心に訴えるものがあったようです。
「忙しい日々で荒んだ気持ちが、オンライン説教を通じて少しずつ和らぎました。住職の法話で他力悪人正機の考え方を聞くと、『自分ひとりで頑張らなくてもいい』と思える。これは海外生活のストレス緩和にもつながりましたね。」

3-2. 日本とのつながりを再確認

さらにAさんは、「オンライン説教に参加することで日本との精神的な絆を感じられた」と言います。チャットで他の参加者と軽く挨拶を交わすと、「日本人の温かさ」や「共通の文化を持つ仲間」の存在を確認でき、海外で孤立感を感じていた心が救われる感覚があったとのこと。
「仏教は国家や人種を超えた普遍性を持つはずだけど、同じ日本語で説法を聴けるのはやはり特別。海外では日本語を聞く機会が限られているので、法要の言葉が自分の文化的ルーツを強く思い出させてくれました。」


4. 気づいた課題と今後への期待

4-1. 回線状況やコミュニケーションの限界

オンライン説教は大いに役立つ一方、Aさんは「時々、回線が不安定で声が途切れたり、映像が止まったりするストレスはある」と正直に語ります。
「また、参加者が増えるとZoomのチャット欄が賑やかになりすぎて、住職が対応しきれない場面もありました。リアルタイムでコミュニケーションする魅力がある反面、大勢をまとめるのが大変なんだろうなと思いました。」

4-2. 現地での仏教コミュニティとの連携

Aさんは「このオンライン説教をきっかけに、海外在住の日本人向けにローカルの仏教コミュニティがあれば参加したい」と考え始めたと言います。しかし、地域によっては日本語で法要や法話を行うお寺が少なく、英語や現地語での仏教活動が主流だったりするようです。
「住職も、『できれば現地のお寺とも繋がりがもてるといいですね』と勧めてくれましたが、まだ見つかっていません。いずれはオンラインで学んだ日本の浄土真宗と、現地の上座部仏教とか禅宗のお寺とも交流が生まれたら面白いですよね。」


5. まとめ

オンライン説教に参加した海外在住者の声」からは、物理的な距離を超えて仏教の教えを受け取り、念仏や法話を通じて心の支えを得ている姿が浮かび上がってきます。海外生活での孤独やストレスを抱える人にとって、日本語での法要配信Zoom説教は大きな安心材料となっているようです。
コロナ禍以降、リモート法要オンライン法座がさらに発展する可能性があり、日本に限らず世界のどこに住む人でも浄土真宗や仏教の教えにアクセスできる時代が到来しつつあります。Aさんのように、「他力本願」や「悪人正機」の考え方が海外生活の心の支えとなり、さらには日本との文化的絆を感じるきっかけとなる例は、今後ますます増えていくのではないでしょうか。

【参考文献・おすすめ情報】

  • 各浄土真宗本山や寺院の公式サイト:オンライン説教・配信スケジュール
  • 親鸞聖人 著 『教行信証』 (教義理解に)
  • 海外日本人コミュニティのSNSグループ:在外日本人向け仏教情報の共有

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