はじめに
私たちの生活の中で、ペットは大切な家族の一員として存在しています。犬や猫、小鳥やウサギなど、種類を問わず、長い時間を共に過ごしてきたペットが亡くなったとき、その喪失感や悲しみは想像以上に大きいものです。
そんなとき、近年では「ペット葬儀」というサービスを利用して、きちんと送り出す人が増えています。私も、愛犬を看取った後にペット葬儀を行ったのですが、その際に感じたことは、単なる「葬儀サービス」では片付けられない、深い心の整理に通じるプロセスがあるということでした。今回は、その時の体験を率直に綴りたいと思います。
1. ペット葬儀を決めた理由
1-1. 愛犬との最後の別れを大切にしたい
私が飼っていたのは15年ほど連れ添った愛犬で、晩年は病気のために通院や介護が必要でした。最期は自宅で息を引き取り、深い悲しみに包まれながらも、少しでも「ありがとう」「お疲れさま」という気持ちを形にして送り出したいと思ったのです。
そこで、最近よく耳にする「ペット葬儀」というサービスの存在を思い出し、インターネットで検索。自宅近くにもペット霊園や移動火葬サービスがあり、口コミも悪くなかったのでお願いすることにしました。
1-2. 自分で埋葬はためらいがあった
一部の地域では、自宅の庭に埋葬したり、市区町村のゴミ処理方式(焼却)に頼ったりするケースもあるようですが、私の場合は「自分の手で遺体を扱う」ことに強い抵抗を感じました。
愛犬を雑に扱ってしまうのではないかという不安もあり、やはり「きちんと葬儀の形をとりたい」との思いが強かったのです。
2. 当日の流れと葬儀の雰囲気
2-1. 担当スタッフのサポート
予約した業者は、移動火葬車で自宅へ来てくれるタイプでした。担当スタッフの方がとても丁寧に対応してくださり、まずは愛犬との思い出話を軽く聞いてくれました。私があふれる涙をこらえきれずにいると、「大丈夫ですよ。ゆっくりで構いません」と声をかけ、私がペットの遺体をお棺(ペット用の小さな棺)に納めるのを優しく手伝ってくださいました。
2-2. お別れの時間
火葬する前に、十分なお別れの時間をとるように配慮してくれました。私は遺体にお花と、愛犬が好きだったおやつ(焼きいもなど)を少し入れ、最後に「ありがとう」と声をかけました。その瞬間、言葉にできないほどの涙があふれましたが、周囲のスタッフや家族も静かに見守ってくれて、とても温かい雰囲気で見送ることができたのです。
2-3. 火葬・拾骨のプロセス
移動火葬車による火葬は、30分~1時間ほどかかるとのことで、私は家の中で待機していました。途中で終了の合図があり、担当スタッフが「拾骨(お骨上げ)」をさせてくれました。
人間の葬儀と同じように骨壺へ納める作業で、骨が意外にしっかり残っていたことに驚きました。「愛犬も頑張って生きてくれたんだな」という気持ちになり、また泣きそうになったのを覚えています。
3. 実際に感じたこと:心の整理と安堵
3-1. 人間と同じように「送る」意味
ペット葬儀という形をとったことで、「ああ、この子は本当に家族だったんだな」と改めて実感しました。人間の葬儀ほど大掛かりではないけれど、ちゃんと火葬し、お骨を拾い、手を合わせるというプロセスを踏むことで、飼い主としての責任を全うできたという安心感があります。
「ペットにそこまでする必要あるの?」と言う人もいるかもしれませんが、私にとっては大切な家族を失った衝撃を和らげるために、必要不可欠なステップでした。
3-2. 念仏と阿弥陀仏への思い
私は浄土真宗の門徒というわけではありませんが、学生時代に仏教の「他力本願」という考え方に触れた経験があり、その時のことを思い出しました。「人間だけでなく、すべての生き物を含め、阿弥陀仏の慈悲は行き渡るのではないか」という言葉を聞いたことがあります。
火葬の際、私は心の中でそっと「南無阿弥陀仏」と唱えていました。犬だからといって救われないわけはない。動物にも無量のいのちがあり、その存在は私の心に刻まれている—そんな感覚があり、何とも言えない安堵と温かさが生まれたのです。
4. ペット葬儀がもたらす意義とは
4-1. グリーフケアの一環
現代では、グリーフケア(悲嘆ケア)の重要性が説かれています。人間の葬儀はもちろん、ペットの場合でも、「きちんと別れの儀式をする」ことで、飼い主の心の整理を助ける効果があります。火葬と拾骨を終えた後、私は「この子はもう苦しんでいない。安らかに眠っているんだ」という気持ちを持てたため、悲しみと共に優しさが広がった気がしました。
4-2. 家族や周囲との絆の確認
ペット葬儀には、家族や友人が一緒に参列してくれることも多いです。私の場合も、両親や兄弟、仲の良い友人が駆けつけてくれました。みんなで手を合わせ、「あの子は本当に頑張ったよね」「いっぱい癒やされてた」などと思い出を語る時間は、家族や仲間との絆を再確認するきっかけにもなりました。
5. まとめ
「ペット葬儀をしたときの率直な感想」として、私が強く感じたのは、命の重さや尊さは人間だけでなく、動物にも変わらないということ。家族として日々を共に生きたペットに対し、最後まで責任を持って見送ることで、自分自身の心の平穏を保ち、感謝を伝えることができました。
また、仏教的な視点から言えば「他力本願」や「阿弥陀仏の慈悲」をどこまで動物に適用できるのかは議論の余地があるかもしれませんが、少なくとも私の心の中では「きっとこの子も仏の光に包まれている」という思いが生まれ、悲しみを和らげる大きな支えとなりました。
もし愛するペットを失って途方に暮れている方がいれば、ペット葬儀や仏教の教えに頼るのも一つの方法かもしれません。しっかりとお別れをすることで、命の尊厳を守り、気持ちを前向きにリセットできるかもしれないのです。
【参考文献・おすすめ情報】
- 各ペット霊園・火葬業者の公式サイト(サービス内容や料金を比較)
- ペットロスに関するカウンセリング・グリーフケアのサイト・書籍
- 親鸞聖人 著 『教行信証』(動物への言及はないが、他力本願の理解に)