葬儀での焼香作法:真宗ならではの特徴

目次

1. はじめに:焼香とは

焼香(しょうこう)は、仏教の葬儀や法要で行われる重要な儀式で、香を焚いて合掌することで、仏や亡くなった方々への敬意を表す行為です。宗派や寺院によって作法や回数が異なるため、戸惑うこともあるかもしれません。
浄土真宗では、焼香の作法が他の宗派と異なる部分があります。特に浄土真宗本願寺派(西本願寺)では、焼香の回数は「1回」と定められており、この点について正確な情報をお伝えします。

2. 浄土真宗本願寺派(西本願寺)の焼香作法

浄土真宗本願寺派(西本願寺)では、葬儀や法要の際に行う焼香の回数は1回が正式とされています。これは、阿弥陀仏の本願に感謝し、念仏を称えることを主軸とする浄土真宗の教義に基づいています。
他宗派のように、煩悩を断つために回数を多くするという発想はなく、1回の焼香で十分であるとされます。1回で香を香炉に捧げ、合掌して念仏を称えることで、故人への感謝と仏への帰依を表すことができます。

2-1. 焼香回数が1回とされる理由

浄土真宗本願寺派では、他力本願の教えに基づき、「煩悩を自力で断つ」という考え方を強調しません。むしろ、阿弥陀仏の本願によってすでに往生が定まっていると信じ、焼香はその感謝を示す行為として行います。
そのため、焼香回数は1回で十分であり、回数にこだわる必要はありません。1回の焼香で故人を偲び、念仏を称えることにより、仏前に敬意を表し、心を清めることが大切です。

3. 真宗大谷派(東本願寺)での焼香作法

浄土真宗大谷派(東本願寺)では、焼香回数として3回が一般的に行われます。これは、法名や戒名を授ける回数に合わせている場合もあります。
参列者は3回香をつまんで香炉に落とし、その後合掌して念仏を称えます。この作法は、「自分の力で煩悩を断つ」という自力的な考え方ではなく、阿弥陀仏の本願に感謝しつつ念仏を称えるという点で共通していますが、焼香回数に違いが生じていることがわかります。

4. 焼香作法の一般的な流れ

浄土真宗の葬儀で行われる焼香の流れは、以下のようになります。
1. 焼香をつまむ
参列者は香炉の前に進み、親指と人差し指、中指の3本で抹香を軽くつまみます。

2. 香炉に捧げる
香を額に当てることはせず、香炉に落とします。浄土真宗本願寺派では1回、真宗大谷派では3回が一般的です。

3. 合掌して念仏
焼香後、合掌して「南無阿弥陀仏」を心の中で称え、念仏の功徳に感謝を表します。

5. 他宗との違い

他宗派では、焼香の回数が重要視され、1回、3回、5回など、回数が定められていることが多いです。
また、香を額に当てる動作が一般的な宗派もありますが、浄土真宗ではそのような所作は行わず、香をそのまま香炉に落とす形式が主流です。
浄土真宗では「煩悩を断つ」という修行の意識はあまり強調されず、念仏の教えに基づいて「仏に感謝する」ことが大切にされています。

6. 焼香と法要の進行

浄土真宗の葬儀では、焼香は法要の一部として行われ、次のように進行することが多いです:

  • 僧侶の焼香:住職が最初に焼香を行い、故人への敬意と仏への感謝を表します。
  • 喪主・遺族の焼香:次に喪主や遺族が焼香し、その後親族や会葬者が順番に焼香します。
  • 焼香後の念仏:全員が焼香後、合掌し「南無阿弥陀仏」と念仏を称えます。
  • 法話:住職による法話が行われ、念仏の意味や故人の往生の意義が説明されます。
  • お斎(おとき):法要後、お斎(精進料理)を共にしながら、門徒同士の交流を深めます。

7. まとめ:浄土真宗の焼香作法のポイント

浄土真宗の葬儀における焼香は、「阿弥陀仏の本願に感謝」を表す儀式として行われます。
浄土真宗本願寺派(西本願寺): 通常、1回の焼香が基本。
真宗大谷派(東本願寺): 通常、3回の焼香が行われる。
焼香は自力修行を強調せず、感謝の気持ちを表す行為として行われます。参列者は故人への感謝と、阿弥陀仏の本願に生かされていることへの感謝を心から捧げることが大切です。

参考資料

  • 『教行信証』 親鸞 聖人 著
  • 『御文章』 蓮如上人 著
  • 浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 公式サイト
  • 浄土真宗の葬儀に関するガイド
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