“正信偈”の由来と構成:どんなことが書かれているのか

目次

はじめに

浄土真宗の宗祖・親鸞聖人が遺した「正信偈」は、阿弥陀仏の本願や歴代の祖師の教えを要約し、浄土真宗の核心を示す最も重要な経文の一つです。
しかし実際にどのような由来があり、どのような構成になっているのか、意外と詳しく知らない方も多いかもしれません。本記事では、「正信偈」が成立した背景や、全体の構成・各パートの意味を概説します。
「正信偈」を通じて、阿弥陀仏の大いなる慈悲と、親鸞聖人が受け継いだ浄土教の流れを改めて感じてみましょう。

1. 正信偈とは何か

正信偈は、親鸞聖人が著した大作『教行信証』の中の「行巻」の末尾に位置し、**阿弥陀仏の本願の素晴らしさ**と、それを説いた歴代の祖師たちを讃える偈文(げもん)です。
一般的に「正信偈」といわれる部分は、和文の序文を除いた、中国語(漢文)をベースとした約120行ほどの偈文を指します。**「正しく信じる偈文」**という意味から「正信偈」と呼ばれ、浄土真宗の**日常のお勤め**や**法要**で繰り返し唱えられています。

2. 正信偈の由来:教行信証の一部

親鸞聖人は、師である法然上人の専修念仏の教えを受け継ぎ、『教行信証』という大著を著しました。
– **『教行信証』**:6巻構成(教巻・行巻・信巻・証巻・真仏土巻・化身土巻)で、**阿弥陀仏の本願**や**信心の大切さ**を論じた浄土真宗の根本聖典。
– **正信偈**は、そのうちの**行巻**(ぎょうのまき)の末尾に収録され、親鸞聖人自身が仏法を信じ、称える心境を凝縮した詩文と言えます。
「正信偈」の漢文体の偈文を日本語で読誦する形が、現在の**お勤め**や**法要**で広く定着しているのです。

3. 正信偈の構成:主なパート

正信偈は、およそ120行(行譜)からなり、大きく下記のような流れで構成されています。
1. **阿弥陀仏の本願**を讃える部分
2. **七高僧**(龍樹菩薩、天親菩薩、曇鸞大師、道綽禅師、善導大師、源信僧都、法然上人)の教えを讃える部分
3. **阿弥陀仏の光や救いを示す**結びの部分

1. 阿弥陀仏の本願の称揚

冒頭では、**阿弥陀仏**がいかに強い本願を立て、衆生を救うために49の願(中でも第18願)を誓ったのかを称え、その力の絶対性を讃える内容が描かれます。
ここには、**「凡夫であっても念仏によって救われる」**という浄土真宗の他力本願の精神が色濃く表れています。

2. 七高僧への礼讃

次に、親鸞聖人が「七高僧」と呼ぶ歴代の祖師を挙げ、それぞれが**阿弥陀仏の救い**をいかに説き、伝えてきたかを讃えます。
– **龍樹菩薩(インド)**
– **天親菩薩(インド)**
– **曇鸞大師(中国)**
– **道綽禅師(中国)**
– **善導大師(中国)**
– **源信僧都(日本)**
– **法然上人(日本)**
親鸞聖人が**法然上人**を最後の高僧に位置づけ、自らが受け継いだ念仏の教えの源流を示す構成です。

3. 結び:衆生を救う光

正信偈の後半では、**阿弥陀仏の光明**がいかに無礙(むげ)であり、衆生を一切区別なく照らすかが讃えられ、**「ただ念仏」**によって救われる道が強調されます。
最終的に親鸞聖人は、自らが阿弥陀仏の力によって救われていることへの感謝を語り、「南無阿弥陀仏」に帰依する心を明確にします。

4. 正信偈を読誦する際のポイント

**正信偈**は、浄土真宗の法要や家庭でのお勤め(朝夕の礼拝)で広く読誦されますが、以下のような注意点やポイントを意識すると、より深く味わうことができます。

  • 節(し)を付ける:地域や寺院によって**読誦の節回し**が多少異なる。初めての場合は、住職や先達の声を聴き、調子を合わせる。
  • 声を合わせる:家族や門徒会で唱えるときは、リズムをそろえることで一体感が生まれ、南無阿弥陀仏の気持ちを共有しやすい。
  • 漢文をそのまま読む:現代日本語で翻訳されているわけではないので、**訓読**や**返読**の形で読む。意味を深く理解したい場合は解説書や注釈書を活用。
  • 長い部分は省略可:家庭礼拝で時間がない場合、簡略化された「正信偈短文」を用いることもある。

重要なのは「うまく読もう」としすぎず、**阿弥陀仏を讃える気持ち**と**他力への感謝**を込めて唱えることです。

5. 正信偈が伝えるメッセージ

最後に、「正信偈」が私たちに伝える主なメッセージを簡単にまとめます。

  • 阿弥陀如来の大本願:すべての衆生を救済したいと願う阿弥陀仏の誓いが、昔から途切れることなく続き、今ここで私たちを照らしている。
  • 歴代祖師の教え:インド、中国、日本という流れを経て、**「ただ念仏」**の教えを継承してきた高僧たちが、その智慧と慈悲を伝えてきた。
  • 凡夫への救い:私たち凡夫が自力で悟りを得るのは難しいが、阿弥陀仏の光によってこそ救われるという**他力本願**の核心が強調される。

このような内容を**コンパクトに**まとめているのが「正信偈」の魅力であり、浄土真宗の門徒が**毎日読誦する**理由とも言えるでしょう。

まとめ

「正信偈」は、阿弥陀仏の本願とそれを証明する歴代祖師たちへの感謝を凝縮した浄土真宗の中心的偈文です。由来を辿ると、親鸞聖人が著した『教行信証』の一部であり、「衆生はすでに阿弥陀仏のはたらきによって救われている」という他力本願の要を明確に示しています。
日々のお勤めや法要で正信偈を唱えることで、**「ただ念仏」の生き方**が自然と深まり、私たちは**阿弥陀如来の光に包まれて生きている**ことを実感しやすくなるでしょう。ぜひこの偈文を声に出して読み、その**力強くも優しい響き**を味わいながら、浄土真宗の教えを身近に感じてみてください。

参考資料

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