東西本願寺それぞれの年中行事リスト

目次

1. はじめに:本願寺派と真宗大谷派の違い

浄土真宗の教団は、大きく分けると西本願寺を本山とする本願寺派(浄土真宗本願寺派)と、東本願寺を本山とする真宗大谷派に二大勢力が存在します。いずれも親鸞聖人を宗祖と仰ぎ、阿弥陀仏の本願による他力の救いを基本教義としていますが、歴史的経緯や運営方針の違いから、一部の行事や名称、儀式の進め方に若干の相違が見られます。
本記事では、西本願寺東本願寺それぞれの年間を通じた主な行事をリストアップし、両者の共通点・特徴について簡単にまとめます。

2. 西本願寺(本願寺派)の主な年中行事

西本願寺は京都市下京区にあり、正式名称を「龍谷山本願寺」といいます。
代表的な年中行事は以下の通りです:

  • 1月:修正会(しゅしょうえ)
    年初めの法要で、念仏のはたらきをいただきつつ新年の始まりを祝う。
  • 春のお彼岸(3月)
    彼岸法要が営まれ、阿弥陀仏の本願と往生の意義を再確認する時期。
  • 降誕会(5月21日前後)
    親鸞聖人の誕生を祝い、聖人の教えを学ぶ行事。こども降誕会など家族向けの企画が行われることも。
  • 夏のお盆(7月・8月)
    先祖がすでに往生しているとの立場から、棚経や墓参を通じて感謝を表す。
  • 秋のお彼岸(9月)
    春と同様、彼岸法要が営まれ、往生や仏縁を見つめ直す機会となる。
  • 報恩講(11月下旬~翌年1月頃)
    親鸞聖人の命日(旧暦11月28日)に合わせた最大の行事。数日間にわたり法要・法話・お斎などが盛大に行われる。
  • 年末年始(12月31日~1月1日)
    除夜の鐘や修正会などを営み、1年の終わりと始まりを念仏と共に過ごす。

3. 東本願寺(真宗大谷派)の主な年中行事

東本願寺は京都市下京区にあり、正式には「真宗本廟」と呼ばれます。
こちらも同様に、年間を通じて多くの行事が営まれます:

  • 1月:修正会
    新年に際しての法要を行い、念仏の教えを確認する。
  • 春のお彼岸(3月)
    彼岸法要が営まれ、特に「往生と阿弥陀仏の光」をテーマにした法話が多い。
  • 降誕会(5月21日前後)
    親鸞聖人誕生の意義を学ぶ法要・記念行事があり、こども向けのイベントも盛ん。
  • 夏のお盆(7月・8月)
    棚経・墓参を中心に、先祖に感謝する期間。霊が戻ってくると考えない点は本願寺派と共通。
  • 秋のお彼岸(9月)
    春同様の彼岸法要が営まれ、門徒同士の交流も深まる。
  • 報恩講(11月下旬~翌1月頃)
    親鸞聖人への感謝を示す最大の行事。東本願寺でも数日にわたる大規模な法要を行う。
  • 年末年始
    除夜の鐘や修正会など、1年の終わりと始まりに法要を行う点は西本願寺と共通。

4. 東西本願寺の違いはどこにある?

大きな枠組みでは、報恩講やお彼岸・お盆など、行事自体は類似していますが、儀式の進め方読経の所作式次第の細部などに若干の違いがある場合があります。また、年末年始や春秋の彼岸における法要の名称スケジュールが微妙に異なることも。
しかし、両派とも親鸞聖人を宗祖とし、阿弥陀如来の本願による救済を強調する教義に変わりはありません。行事の趣旨や念仏を称える精神は共通しており、その違いは主に歴史的経緯や運営方法によるものと捉えて問題ありません。

5. 共通する意義:阿弥陀仏の本願に感謝する

西本願寺と東本願寺の行事リストを見ても、「報恩講」「お彼岸」「お盆」「降誕会」など、主だった行事は共通しています。これらはいずれも、阿弥陀如来の本願への感謝と、親鸞聖人の教えを見つめ直す機会という点で一致します。
たとえば、お彼岸には先祖がすでに往生して仏となっていることを思い、お盆には「亡き方への感謝」を示すことや地域コミュニティでの法要が主軸となります。報恩講降誕会では、親鸞聖人の遺徳を偲びながら、自分自身の信仰を深める時間を持ちます。こうした行事を通して、毎年繰り返し念仏の教えを確認し合うのが、真宗の年中行事の本質です。

6. 寺院や在家が行う準備

年中行事を行うにあたっては、寺院・在家ともに以下のような準備が一般的:
1. 本堂や仏壇の掃除
仏具を磨き、花を飾り、荘厳を整える。

2. 法要の進行計画
読経や法話、行列(稚児行列など)がある場合の段取りを確認。

3. 参拝者の受け入れ
大規模行事では受付や駐車場、トイレなどの整備が必要。

4. お斎(精進料理)の準備
報恩講などでは参加者向けの食事を用意し、役割分担を明確化。

7. 現代での展開:若者や海外の人へのアプローチ

年中行事において、近年は若い世代や海外からの観光客・門徒にも参加しやすいように工夫が進んでいます。例えば、英語による法話案内やSNSを活用した告知、音楽やアートを取り入れたイベントなど、多様な切り口で阿弥陀如来や親鸞聖人の教えを伝える試みが見られます。
西本願寺・東本願寺ともに、境内整備や文化財公開を行い、観光地としての魅力も高めながら、宗教行事を正しく理解してもらうためのガイドやパンフレットを充実させているのが特徴です。

8. おわりに:阿弥陀如来への感謝を深めるために

東西本願寺がそれぞれ行う年中行事は、名称や細部の進行がわずかに異なる場合もありますが、根本には「阿弥陀如来の本願によって凡夫が救われる」という共通の教えがあります。
春秋のお彼岸やお盆、報恩講、降誕会などを通じて、私たちは毎年、繰り返し信仰を確認し合い、他力の安心を実感します。両本願寺の年中行事リストを活用しながら、各行事の意味を学び、実際に参拝してみることで、親鸞聖人の教えにより深く触れるきっかけとなるでしょう。

参考資料

  • 『教行信証』 親鸞聖人 著
  • 『御文章』 蓮如上人 著
  • 西本願寺(本願寺派)・東本願寺(真宗大谷派)公式サイト
  • 各寺院発行の年中行事案内パンフレット
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次