東西本願寺それぞれの本尊:寄木造と漆箔の特徴

目次

はじめに

浄土真宗の本山として知られる西本願寺(浄土真宗本願寺派)東本願寺(真宗大谷派)は、ともに親鸞聖人の教えを受け継ぐ寺院ですが、歴史的な経緯や建築・仏像の面で少しずつ個性を持っています。
なかでも興味深いのは、本尊(本堂に安置されている阿弥陀如来像)の違いです。西と東で、それぞれ「寄木造(よせぎづくり)」の手法を使ったり、漆塗りや金箔が施されたりと、微妙に異なる美術的特徴が見られます。本記事では、両本山の本尊を比較しながら、寄木造漆箔の技術・意味を探ってみましょう。

1. 寄木造(よせぎづくり)とは

寄木造は、仏像を1本の木から彫り出すのではなく、複数の木材を組み合わせて(寄せ木して)作る技法を指します。

  • 大きな仏像の製作が可能:大きな木材を確保しにくい場合でも、複数の木材を組み合わせることで、迫力のある仏像を作れる。
  • ヒビ割れを防ぎやすい:木材は乾燥や湿度により縮んだり割れたりするが、寄木造にすることで**収縮や歪みを分散**し、作品が長持ちする。
  • 精緻なパーツの表現:必要に応じて別パーツを細かく作り、それを後から組み合わせるため、**衣のひだ**や**細部の装飾**が表現しやすい。

寄木造の仏像は、日本の仏教彫刻の中でも**高度な技術**が求められるため、完成度の高い作品は芸術的価値がとても高く評価されます。

2. 漆箔(しっぱく)の特徴

**漆箔(しっぱく)**とは、漆塗り金箔による仕上げの手法です。仏像に木材の素地を整えた後、漆を塗って表面を保護・滑らかにし、その上に金箔を貼ることで、金色に輝く荘厳な外観を作り上げます。

  • 光明の象徴:阿弥陀如来は無限の光(無量光)を放つとされるため、金色の輝きが**仏の光明**を象徴する。
  • 漆の保護効果:漆は木材を保護し、長寿命化する。一方、金箔は金属の光沢で**宗教的荘厳**を演出。
  • 豪華さと高い芸術性:漆箔による装飾はとても華やかで、**寺院の本尊**を象徴する存在感が際立つ。

漆と金箔が組み合わさることで、**仏像全体がまばゆい金色**に包まれ、参拝者に「阿弥陀仏の無限の慈悲」を強く感じさせる演出となります。

3. 西本願寺の本尊:寄木造の華やかな姿

**西本願寺(にしほんがんじ)**の本尊・阿弥陀如来像は、寄木造の技法で作られ、漆箔によって仕上げられている点が特筆されます。
– **大規模なサイズ**:広大な本堂に安置されるため、寄木造を駆使して大きな仏像を制作。
– **金箔の輝き**:漆箔によるまばゆい輝きが、**阿弥陀仏の無量光**を視覚化し、堂内に入ると一際目を引く存在感を放つ。
– **細部の彫刻**:衣のひだや光背の装飾に、非常に繊細な彫刻が施され、日本彫刻史の中でも高い芸術性を誇る。
この本尊は、西本願寺の荘厳な本堂空間と相まって、参拝者に圧倒的な信仰のイメージを与えています。

4. 東本願寺の本尊:漆箔を控えめに活かす工夫

一方、**東本願寺(ひがしほんがんじ)**の本尊・阿弥陀如来像も寄木造が採用されていますが、漆箔の使い方や全体の色合いは西本願寺に比べてやや落ち着いた印象を受けると言われます。
– **落ち着きある色彩**:金箔は使われていても、**豪華一辺倒ではなく**、比較的シンプルかつ重厚な雰囲気を出す工夫がある。
– **光背の表現**:阿弥陀仏の光を象徴する光背は、精巧な彫刻ながらも、堂内の荘厳や建築構造とのバランスを重視。
– **寄木造の技術**:多くのパーツを組み合わせる寄木造特有の**継ぎ目**が、熟練した職人の手によって隠されつつも、繊細な線を作り出すよう工夫されている。
この違いは、東本願寺の**寺院再建の歴史**や建築美学の選択に端を発しているとも考えられ、「金箔の輝き」を強調する西本願寺に対して、やや控えめで落ち着いた趣を表していると言えます。

5. 見どころ:両本山の本尊を鑑賞する際のポイント

西と東の本願寺、それぞれの本尊を観賞する際には、以下の点に注目すると良いでしょう。

  • 寄木造の継ぎ目を探す:実際に近づいて見ると、複数の木材を組み合わせた痕跡が確認できる場合がある。(ただし、近づきすぎは礼儀上注意)
  • 漆箔の質感:金箔がどれくらいの面積で貼られ、漆の下地とのコントラストがどう作られているかを注意深く観察する。
  • 光背の装飾や彫刻:阿弥陀仏の「無量光」を象徴する光背が、西と東で異なるデザイン・彫刻となっている可能性があるため比較すると興味深い。
  • 堂内の照明と演出:金色がどのように光を反射し、堂内の雰囲気礼拝者の心理に影響を与えるかも要チェック。

6. 現代の意義:念仏の教えを支える美術

親鸞聖人が説いた「ただ念仏」の教えを体感する上で、仏像堂内の空間は重要な役割を果たします。特に、西本願寺と東本願寺の本尊は、豪華でありながらも、**阿弥陀如来の慈悲**を視覚化するための工夫が凝らされているため、参拝者は堂内で念仏を称える際に**仏の光**と**救い**をより実感しやすくなります。
また、現代の視点から見ても、寄木造や漆箔の技術は**日本の伝統工芸**の粋であり、**文化財**としての価値が非常に高いと評価されています。これらの仏像建築が伝えてくれるのは、人々の信仰と芸術が融合した豊かな世界と言えるでしょう。

まとめ

西本願寺(お西)と東本願寺(お東)の本尊は、ともに寄木造漆箔の技術を基礎としながらも、それぞれの歴史的背景や美意識に応じて異なる魅力を放っています。
– **寄木造**:複数の木材を組み合わせて作る手法で、大型の仏像を制作しやすく、木材の収縮による損傷も分散。
– **漆箔**:漆を下地に金箔を貼り、美しい金色の輝きを演出。阿弥陀仏の無量光を象徴する表現。
– **お西・お東の違い**:西本願寺は豪華・金箔を強調する傾向、東本願寺はやや落ち着いた表現の傾向が見られる。
こうした美術的な差異は、「ただ念仏」の教えをどのように具現化するかという発想の違いにもつながっており、堂内に足を運ぶと阿弥陀仏の光慈悲を実感できる空間を味わうことができます。

参考資料

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