遺言執行者・遺言書保管システムなどの用語

遺言書」は、故人が生前に自分の財産や葬儀の希望を明確にしておくための強力な手段ですが、実際には書いて終わりではありません。
作成した遺言書をどのように保管し、死後に確実に執行してもらうかが大きな課題となります。
本記事では、遺言書を確実に活かすための「遺言執行者」「遺言書保管システム」に関する基本用語を解説し、浄土真宗の「他力本願」の観点から見た意義にも触れます。

目次

1. 遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは?

「遺言執行者」は、遺言書に書かれた内容を実際に実行(執行)するための責任者を指します。民法上、遺言執行者は以下のような役割や特徴を持ちます:

  • 権限: 遺産の管理や名義変更、財産分配など、遺言に書かれた内容を実現する
  • 指定方法
    • 遺言書で直接指定される
    • もしくは遺言書で「○○が遺言執行者を決める」と指示し、第三者が選ぶ
    • 遺言書に指定がなくとも、家庭裁判所が選ぶケースあり
  • 資格: 法的には誰でもなれるが、弁護士司法書士など専門家が選ばれると手続きがスムーズ
  • 報酬: 有償・無償いずれも可。専門家の場合は報酬規程に基づいて受け取ることが多い

遺言執行者が明確に決まっていれば、遺言の内容が確実に実行され、家族間でのトラブルが減らせるメリットがあります。

2. 遺言書保管システムとは?

「遺言書保管システム」は、作成した自筆証書遺言を安全に保管し、死後にきちんと発見・確認できるよう国が運営する仕組みです。
2020年(令和2年)から始まった「自筆証書遺言書保管制度」では、法務局が自筆証書遺言を預かり、保管死後の閲覧をサポートします。

  • 手続き
    • 遺言者が法務局に申し込み、遺言書を提出
    • 法務局が形式チェックし、問題なければ保管
    • 保管した遺言書はデータベースで管理され、死後に遺言執行者や相続人が閲覧可能
  • メリット
    • 自筆証書遺言でありがちな「紛失」「改ざん」「発見されない」リスクを大幅に軽減
    • 検認手続きが不要になる(法務局保管のため)
  • 費用
    • 保管料として3,900円(令和5年現在)
    • 変更や取り下げには追加手数料がかかる場合あり

従来の自筆証書遺言は、自宅銀行の貸金庫にしまっておく例が多かったため、紛失や未発見が問題になりがちでした。遺言書保管システムを使えば、そのリスクが大きく減ると期待されています。

3. 他の関連用語

  • 公正証書遺言: 公証役場で公証人が作成する遺言。法的に最も確実だが費用と手間がかかる。
  • 秘密証書遺言: 遺言書の内容を他人に知られずに作成するが、公正証書ほどの安全性はない
  • 検認: 家庭裁判所が自筆証書遺言を封印されたままの状態で開封し、内容を確認する手続き。
    法務局保管制度を利用すれば原則検認は不要。

4. 浄土真宗の視点:遺言の内容が往生を左右するわけではない

浄土真宗の「他力本願」に基づけば、遺言の有無財産の分配方法成仏を左右するわけではありません。
しかし、遺言執行者や保管システムを活用し、故人の意思をしっかり残しておけば、残された家族混乱や争いを避けることにつながります。
つまり、こうした制度を利用するのは、「家族や周囲への配慮」を形にするという点で、仏教の相互扶助の精神(他力本願)にも通じると言えるでしょう。

5. 上手に活用するためのポイント

  1. 1. 遺言執行者を遺言で明確に指定
    – 誰が後事を任されるのかを書いておけば、相続手続きがスムーズ。
  2. 2. 保管システムの利用
    – 自筆証書遺言を法務局に保管してもらえば、紛失リスクを下げられる。
    – 費用は数千円程度とリーズナブル。
  3. 3. 公正証書遺言との比較
    – 多額の財産がある場合や相続人が多い場合、公正証書遺言を検討しても良い。
    – コストはかかるが法的に確実
  4. 4. 家族にノートの所在を伝える
    – 遺言書だけでなく、エンディングノートなども併用して、所在情報を家族に共有

まとめ:遺言執行者と保管システムで安心感をアップ

  • 遺言執行者: 遺言書に書かれた内容を実行する責任者。
    遺言で指定しておくと、相続手続きがスムーズ。
  • 遺言書保管システム: 自筆証書遺言を法務局が預かる制度。
    紛失や未発見、改ざんリスクを軽減し、検認も不要となる。
  • 浄土真宗の視点: 「他力本願」により、どのような遺言でも往生を左右しないが、家族の混乱を防ぎ、相互扶助の精神を示す。

遺言執行者」や「遺言書保管システム」を活用すれば、故人の意思を確実に伝えられ、家族が迷わずに手続きを進められます。
浄土真宗で言う「他力本願」の観点からすると、財産の分け方遺言の有無成仏を左右しないものの、家族や周囲を支える仕組みとして、遺言執行者や保管制度は非常に有益です。
ぜひ、専門家家族と相談しながら、自分に合った遺言の形を選んでみてください。

参考文献

  • 民法(相続・遺言に関する条文)
  • 法務局「自筆証書遺言書保管制度」情報
  • 『教行信証』 親鸞 聖人 著
  • 『歎異抄』 唯円 著
  • 相続・遺言に関する弁護士・司法書士の実用書
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